大分県立竹田高校剣道部死亡事件

大分県立竹田高校の剣道部で2009年、体調不良の兆候を示していた生徒に対して顧問教諭が適切な対応を取らずに平手打ちなども加え、熱射病で死亡した事件。

事故概要

大分県竹田市の大分県立竹田高校で2009年8月22日、剣道部の練習がおこなわれていた。

練習は午前9時頃に始まったが、正午頃に剣道部主将の2年生男子生徒がふらついて倒れ、意識不明になった。生徒は病院に運ばれたが、同日夜に死亡した。死因は熱射病と判明した。

指導にあたっていた顧問の男性教諭(48)について、事件直前に「部員らに水分補給をさせなかった」「倒れそうになった生徒に対して練習を続けるよう強要し、蹴りつけるなどした」「倒れた際に生徒を平手打ちした」などの証言が、一緒に練習していた部員から出されたという。一方で顧問教諭の証言は、部員らの証言と食い違っているという。

学校側は2009年9月8日、第三者による調査委員会を設置し、調査をおこなうことにした。調査委員会には心理学やスポーツ生理学の専門家、剣道関係者などが含まれている。

調査委員会は2009年11月2日、「練習メニューは不適切だった。異常の発見が遅れた」とする報告書をまとめた。報告書では、生徒が倒れる直前に約1時間半にわたって水分補給なしで練習させたことを指摘している。また、倒れそうになった生徒に対して顧問教諭が「演技だろう」として腰を蹴りつけたことや、生徒が倒れた際に顧問教諭は平手打ちを約10発加えたことも指摘している。

学校側は報告書を受けて記者会見し、死亡については「配慮があれば防げた。再発防止に努める」という見解を示した一方、「体罰」については「行為が『体罰』に当たるかどうかについては断定できないが、行きすぎた指導があったと思う」などとした。

大分県教育委員会は2009年12月28日、ふらついている生徒の腰を蹴るなどの行為を「体罰」と認定した上で、生徒の異変を見逃し救護措置が遅れたなどとして、顧問教諭を停職6ヶ月の懲戒処分にした。また一緒に指導していた副顧問の男性教諭(42)についても、異変を見逃し救護措置が遅れたとして同日付で停職2ヶ月の懲戒処分にした。

遺族は2010年2月20日、顧問・副顧問個人と大分県を相手取り損害賠償を求める民事訴訟を提訴する意向と、教諭2人を業務上過失致死と重過失致死容疑で刑事告訴する意向を表明した。

刑事告訴

事件は大分県警竹田署も捜査していたが、熱中症と死亡との因果関係が断定できないと結論付け、2009年9月頃には刑事事件としては保留状態となった。

遺族は2010年3月12日付で、顧問教諭・副顧問教諭の2人を重過失致死などの容疑で大分県警竹田署に刑事告訴した。大分県警は2010年12月8日、顧問・副顧問を業務上過失致死容疑で書類送検した。

民事訴訟

遺族は2010年3月2日、顧問・副顧問と大分県、および搬送先の病院を運営する豊後大野市を相手取り、計約8600万円の損害賠償を求めて大分地裁に民事訴訟を提訴した。病院については「単なる熱中症と誤診し、全身冷却など必要な医療をおこなわなかった医療ミス」と主張している。

大分地裁は2013年3月21日、大分県などに対し約4650万円を支払うよう命じる判決。 一方で顧問教諭個人の責任については、国家賠償法を理由に大分県に責任があるとして請求を棄却した。

遺族側は顧問教諭個人の責任が問われないことを不服として控訴した。しかし顧問ら個人の責任は問えないとする判決が最高裁で確定した。

遺族は行政訴訟として、大分県に対して、県から遺族に支払った損害賠償金相当額を顧問らに求償するよう求める別の訴訟を起こした。2016年12月22日の大分地裁判決では、顧問の重過失を認め、県から遺族に支払った損害賠償金のうち、保険でカバーした相当額を除いた大分県の実質負担分約200万円の半額にあたる約100万円を、大分県から顧問教諭個人に求償するよう命じる判決を出した。一方で、副顧問教諭への求償は認められなかった。

しかし大分県は、求償を命じる判決を不服として控訴した。二審福岡高裁は2017年10月2日、一審判決を支持し、大分県の控訴を棄却した。


「体罰」に関する主な事例

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