大阪市での学校選択制導入はやめるべき

essay

大阪市では、橋下徹大阪市長や「大阪維新の会」の強い意向で、市立小・中学校の学校選択制導入が検討されている。彼らの推進する学校選択制は、児童・生徒の自由選択および学校間・地域間の競争と、3分の1の小中学校統廃合を見越して「不人気校」を口実に学校を淘汰する計画がセットであるとされている。

他地域では廃止・見直しが進む

しかし学校選択制という制度自体、2000年代前半には各地でブームになったものの、2000年代後半になると不具合が出て制度廃止や大幅見直しが進んでいる。

他地域では、交通の便の良い学校や校舎が新しい学校に人気が集中し、当該校では過密化して特別教室を普通教室に転用するなどの事例が報告されている。また逆に交通の便が悪いなどの学校は不人気校となり、地域の生徒が周辺校に流れて生徒が激減した。少人数すぎるために中学校では教科担任が全教科配置されずに教諭が専門外の教科も受け持ったり、部活動が成り立たないようになり、その条件がさらに敬遠されて生徒がさらに減少する悪循環も進んだ。東京などでは少人数校の統廃合もおこなわれた。

大阪市・各区主催のフォーラムでは導入反対意見圧倒的多数

橋下市長は大阪市長選挙時、「賛成意見が多い」と豪語し、住民に意見を聞く場を設けるよう指示した。24行政区各区ごとにそれぞれ少なくとも1回ずつ、区によっては複数の会場を設定したり時間帯を複数設定するなどして複数回の日程を組み、学校選択制を求めるフォーラムを実施した。フォーラム会場では、参加者に学校選択制導入の是非を尋ねるアンケートも実施した。

しかしどこの会場でも、学校選択制に強く反対する意見が会場での質疑応答で出され、またアンケート結果も導入反対が賛成を大きく上回る結果となった。

朝日新聞2012年9月15日付の記事によると、会場からの参加者へのアンケート結果が発表されている20区の結果をまとめると、学校選択制に「反対・どちらかというと反対」と「賛成・どちらかというと賛成」の割合は、小学校で62%対24%、中学校は53%対30%となっている。小学校・中学校とも、いずれも反対が過半数を超え、賛成を大きく上回っている。

各区ごとに集計方法に多少違いがあるので単純に集計しにくい部分もあるが、いくつかの区の個別結果を見ても、いずれも反対が賛成を上回っている。

  • 住吉区(回答133人) 賛成33(24.8%)、反対74(55.6%)、その他・不明26、質問のみ16
  • 天王寺区(回答66人)「賛成+どちらかというと賛成」小学校14(21.2%)・中学校18(27.3%)、「反対+どちらかというと反対」小学校49(74.2%)・中学校41(62.1%)、どちらでもよい小学校1・中学校2、無回答2
  • 淀川区(回答117人)「賛成+どちらかというと賛成」19(16.2%)、「反対+どちらかというと反対」85(72.6%)、どちらでもよい5、その他8
  • 西成区(回答83人)「賛成+どちらかというと賛成」14(16.9%)、「反対+どちらかというと反対」58(69.8%)、どちらでもよい4、その他7
  • 都島区(回答109人) 小中とも賛成26(23.8%)、小学校で賛成・中学校で反対0、小学校で反対・中学校で賛成20(18.3%)、小中とも反対50(45.8%)、分からない7(6%),その他3,無回答・不明3 → 小学校学校選択制賛成23.8%・反対64.2%。中学校学校選択制賛成42.2%・反対45.8%
  • 東淀川区(回答191人) 「賛成・どちらかというと賛成」29(15.1%)、「反対・どちらかというと反対」141(73.8%)、どちらでもよい・その他・未記入21(11%)。東淀川区は年代別集計もとっているが、どの年代でも反対が賛成を上回っている。
  • 旭区(回答163人) 「賛成・どちらかというと賛成」小学校32中学校47、「反対・どちらかと言えば反対」小学校118中学校104

アンケートには自由記述欄も設けられ、賛成・反対それぞれの立場からの記述が書かれていた。各区ごとに公表されている自由記述意見をみると、反対意見のほうが圧倒的に多い。

学校選択制導入反対の意見は具体的

主な反対意見としては、以下のようなことが多く指摘されている。

  • 登下校時の安全、災害時の対応
  • 地域コミュニティの問題
  • 学校の序列化につながる

大阪市ではかつて、上級学校への進学に有利と認知された一部の学校に入るため、もしくは校区に同和地区のある学校を忌避するための越境入学が横行し、廃絶に強く取り組んだ歴史がある。学校選択制でそういう状況が復活して地域差別につながるのではないか。

学校の序列化については、全国学力テストや地域(都道府県や市区)の統一学力テストの結果公表をセットで学校選択制が導入されている地域では、テスト成績(ただの平均点でありひとりひとりの到達度ではない)だけで人気校や不人気校がわかれる傾向も出ている。

同和問題については基本的に解決の方向に向かいつつあり、一部運動団体が同和対策を自称して起こした人権侵害行為など問題行動の後遺症の克服が主な課題となっている。一方で、学校選択制での学校の序列化が原因で、旧同和地区か否かにかかわらず新たな地域差別的事象が生まれることも危惧される。大阪市では過去に地域差別的な問題に苦しめられたこともあり、その手の問題には他地域より敏感なのかもしれない。

賛成意見も「自由選択・学校間競争」を支持しているわけではない

一方で学校選択制賛成については、アンケートでの自由記述欄をみると、橋下徹大阪市長や大阪維新の会がすすめるような、自由選択による学校間競争を支持する観点からの学校選択制賛成の意見はほとんどみられない。

賛成とする意見では、根拠を示さずに賛成とする抽象的なもののほか、「いじめなどからの避難」「校区に指定されている学校より別の校区の学校のほうが近い」といった理由での賛成意見が目立つ。

自由記述欄の内容も公表されていた区での「学校選択制賛成」とみられる主な意見を抽出してみる。

  • 引越しの関係などで近くなのに学校変わるなら選択制にしても良いと思うし 又、小学校からイジメが続いてる場合なら選択制を活用できるから良いと思う。(東淀川区)
  • 臨機応変には選択制は認めるべきである。例えば校区内の学校よりも距離的にも近い学校があれば特例的に認める。(東淀川区)

これらは現行制度の元でも、就学校指定制度を柔軟に適用すれば可能な制度である。いじめからの避難での転校は現行制度でも認められている。また「自宅が校区の端にあるなど、隣の校区の学校のほうが近い」「校区が大通りなどで分断されていて、大通りを渡って通学することになる校区の学校よりも、隣接校区の学校のほうが通学の安全が期待される」など校区の条件によっては、部分的に調整区域を設定して調整区域内在住の希望者は通学校を選べる場合もある。
学校選択制「賛成」の大半は、就学校指定制度の運用について十分に知らないまま、学校選択制と就学校指定制度を混同してしまっているのだと考えられる。

不都合な意見は屁理屈で責任転嫁する橋下・維新

アンケートの結果は、橋下徹大阪市長や大阪維新の会にとっては気に食わないであろう内容になった。しかし、自分の感覚や思いつきが世の中の絶対的真理かのように言い立て、自分の都合の悪い結果が判明すると屁理屈で責任転嫁するのが、橋下・維新の常套手段である。

橋下大阪市長は、2012年3月にトップを切って実施した淀川区のフォーラムでは反対意見ばかりが相次いだという報道に対して、反対派が組織的に動員をかけたかのように妄想を言い立てた。

また維新議員も、フォーラムは少数の反対派が騒いだり組織的に動員をかけたかのような妄想を言い立てている。

村上栄二市議(東淀川区選出・日本創新党にも加入)は2012年5月21日の大阪市会文教経済委員会で「準備を万端にしてきた元教師の方や人権団体の方が一方的な解釈による発言を行い、少数の強い意見、そういったものを主張する場となっておりました」などと中傷する議会質問をおこなった。

また井戸正利市議(都島区選出・みんなの党にも加入)は、都島区のアンケート結果が判明したことを受け、2012年7月15日のツイッターで「学校選択制に対する都島区民の意見、明らかにフォーラムは動員軍団の意見で結果がねじ曲がっています。全体で賛成過半数ですが、区民モニターに比べ保護者の反対が少し多く、教師や学校前の活動家がどのような伝え方を生徒児童や保護者にしたか要チェック。」と書き散らしていた。

しかし反対派が組織的に動員をかけた根拠などどこにもない。そもそもそんなものは存在しないのだから、根拠など示せるはずもない。維新関係者がいくら屁理屈を並べたところで、学校選択制には反対、これが大阪市民の民意なのである。

まとめ

大阪市(橋下・維新)が、他地域で失敗したやり方をさらに劣化させた方法で、しかも住民の民意を無視した方法で導入しようとしていることをみても、大阪市での学校選択制は失敗に終わる可能性が高いことは目に見えている。

住民の声を無視して強行すれば、大阪市の学校教育に重大な禍根を残すことになる。

タイトルとURLをコピーしました