浦安市養護学級わいせつ民事訴訟:県・市に賠償命令

 千葉県浦安市立小学校6年生だった2003年、養護学級担任だった教諭(49)=依願退職=からわいせつ行為を受けたとして、知的障害のある女性(16)と両親が千葉県・浦安市・元教諭を相手取って訴えていた民事訴訟で、千葉地裁は12月24日、元教諭のわいせつ行為を一部認め、県と市に対して60万円の損害賠償を命じる判決を下しました。

 元教諭は2004年2月に強制わいせつ容疑で逮捕されていますが、元教諭は事実無根・冤罪などと訴え、刑事事件としては一審・二審ともに無罪となり判決が確定しています。一方で刑事事件の裁判の中でも、元教諭のわいせつ行為があったという事実は認められています。

 民事訴訟でも元教諭は、刑事事件で無罪となったことを根拠に「事実無根・冤罪」などと主張しました。しかし一口に無罪といっても、その意味する内容には大きな幅があります。

 「容疑となった事実関係そのものが存在しなかった、もしくは事実でも犯罪として問題視されるいわれはないような正当な行為だから無罪」というケースから、「容疑となった事実関係の真偽が確定できないから無罪」というケース、さらには「容疑となった事実関係そのものについては事実として認定しながらも、何らかの事情で有罪判決を出すことが難しいために無罪になる」というケースまであります。

 元教諭に対する刑事裁判の結論はあくまでも「容疑となった事実関係そのものを事実として認定しながらも、何らかの事情で有罪判決を出すことが難しいために無罪になる」という例です。わいせつの事実関係を認定しながらも、具体的な日時を確定できなかったために有罪判決を出せなかったということです。すなわち、容疑となった事実関係自体が存在しないという意味で使われる「事実無根・冤罪」という主張は、根本から成り立ちません。

 刑事判決確定後に被害者は民事訴訟を起こしました。民事訴訟でも一部とはいえども被害の事実関係は認められていることになります。一方で、被害は一応認められているものの、認定範囲が十分ではないという印象も受けます。

 学校関係の訴訟では俗な言い方をすれば「加害者のやり得、被害者のやられ損」のような判決も多いですが、今回の事件でも被害認定範囲は一部にとどまっていることが気になります。

事件概要
 千葉県浦安市立高洲小学校の教諭(当時)が2003年、担任する養護学級で、知的障害を持つ児童への暴力・わいせつ行為を繰り返していた。同教諭は児童を別室に連れ込み、高圧電流銃を押し当てるなどの虐待行為や体を触るなどのわいせつ行為を繰り返していた。また「事件を他言すれば家族を殺す」などと脅して口止めを図っていた。被害にあった児童はPTSDを発症した。
 児童2人に対するわいせつ行為2件の疑いで、2004年2月に警察が教諭を逮捕し、その後起訴。教諭は警察の調べには事実関係を認めながらも、公判後は一転して完全否認に転じ「冤罪」と主張。千葉県教委は「事実関係の確認がとれない」として起訴後分限休職扱いとし、裁判の結果を待って懲戒処分を検討するとした。
 検察側は懲役7年を求刑。しかし一審千葉地裁・二審東京高裁とも、被害者の証言に一定の信用性を認めわいせつの事実関係があった可能性が高いとしながらも、具体的な被害日時が確定できないなどとして無罪判決を下し確定した。
 無罪確定を受けて教諭は復職し研修を受けていたものの、2007年3月に依願退職した。一方で被害者の支援者らは「裁判でもわいせつの事実は認められている」として教諭の免職を求めたが、処分が下らないまま自主退職した形になった。
 被害者らは2006年5月、千葉県・浦安市および元教諭個人を相手取り、民事訴訟を提訴。原告側は、刑事司法の知的障害者への無理解によりPTSDの症状が悪化したことや、教諭への処分が適正におこなわれなかった事後責任なども指摘している。一方で元教諭は民事訴訟でも冤罪を主張し、「保護者との関係がうまくいかなかったことで、逆恨みした保護者から陥れられた」かのような中傷を繰り返した。