神奈川県立神田高校入試問題:『産経』主張のミスリード

 神奈川県立神田高校で、入試選考基準にはない「願書提出時の服装や態度」によって、合格基準に達していた受験生を不合格にしていた問題がありました。このことについて『産経新聞』2008年11月3日付主張『【主張】身なりチェック 規律ただす指導は当然だ』で、事件を正当化するような文章を発表しています。


 『産経新聞』らしいといってしまえばそれまでですし、馬鹿馬鹿しくて一笑に付してもおかしくない内容でしょうが、全国紙ですし影響は無視できません。このような薄っぺらい感情的主張を堂々と垂れ流す神経を疑います。
 「主張」は以下の書き出しで始まっています。

 神奈川県立神田高校の入学試験で、服装や態度に問題がある生徒を不合格としたことで、校長が更迭処分を受けた。
 学校生活にふさわしい服装、態度を含め規律を守ることは合否基準以前に当然のことだ。同校に限らず生徒への指導は毅然(きぜん)と行うべきもので、その原点を十分に議論することなく処分を先行させたのだとすれば極めて残念だ。

 問題の「原点」は「服装・態度」や「規律を守る」という話ではありません。それ以前の問題として、「事前に発表されていない『裏選考基準』を後付け的に作り、その『裏基準』に基づいて入試事務をおこなった」ということです。そのことを全く無視して、不正な選抜を「当然」とするなど論外です。「規律を守る」といいたければ、学校側の手続き不備にこそ向けられるべきでしょう。
 その上『産経』の『主張』ではさらにヒートアップした主張までおこなっています。

 こうした生徒を許してきた責任は家庭や中学校にもある。連携して教育、指導しなければ問題は解決できない。学校現場では厳しい生徒指導をためらう傾向がある。授業で騒いだ子を廊下に立たせるといった指導は体罰や人権侵害だと批判される。授業中にメールをしていた生徒から携帯電話を取り上げただけで保護者が抗議してくるケースもあるという。

 どさくさに紛れて、全く無関係な「体罰」正当化と「モンスターペアレント」攻撃までおこなっているのは、意図不明ですし論理破綻です。
 「体罰」や「モンスターペアレント」はそもそもこの問題には全く関係ありませんが、産経新聞の「体罰」「モンスターペアレント」観には著しい事実誤認があります。「学校現場では厳しい生徒指導をためらう傾向がある。」というのは事実と異なり、逆に「厳しい指導」を自称した生徒いじめ・人権侵害がまかり通っています。悪質で執拗な暴力でも「正当な指導」と強弁する教師やそれを支持する一部保護者がいるなどのケースもあり、いわゆる「モンスターペアレント」はそういう連中が逆恨みで作り上げた虚像(不都合な指摘には「モンスターペアレント」攻撃をおこなって封じようとする)であることも珍しくありません。
 「体罰」や「モンスターペアレント」はさておき、「産経」の主張は「問題の本質を意図的に無視し、関係のないことを持ち出して論点をすり替えている」としか読めません。
 個人的にはあまり支持できませんが、仮に「願書提出時の服装や態度」を選考基準に入れたければ、事前に堂々とその旨を公表すべきです。問題の本質はそこであり、「服装・態度」はたまたま「裏選考基準」の対象だったというだけの派生的な問題で本質とは関係がありません。