全国学力テスト市町村別結果公表要請、市町村教委の反応:大阪府

 2008年4月に実施された全国学力テストについて、大阪府が府内の各市町村に、自治体別の成績を公表するよう求める通知を出すことを固めました。

 それに対して市町村教育委員会の担当者は、反発やとまどいの声を上げているということです。

 『朝日新聞』2008年9月3日付『学力調査結果 市町村に公表要請へ』によると、市町村教育委員会担当者の声として以下のようなものが紹介されています。

  • 大阪市:「テストの点数は、学力のほんの一部を表す数値に過ぎず、公表するメリットはないと考える」「市内の各学校に対して、公表しないという前提で学力調査を実施しており、その方針を覆せば教育現場との信頼関係が揺らぐ」
  • 豊中市:「大阪は人権教育を大切にしてきた。1位、2位、3位と公表することが子どもたちのためにいいのかよく考える必要があるのではないか」
  • 高槻市:「テストの点数だけが学力のすべてではない。自治体別の順位が上がった下がった、ということにはしたくない」
  • 枚方市:「市町村別の成績を公開しても、学校別は非公開とできるのか、(市独自の学力テストの学校別成績公表を求める訴訟が係争中という背景をふまえ、係争中の)訴訟との整合性も考慮しないといけない」
  • 大阪狭山市:「市町村別を公開したら今度は学校別も公開すべきだ、という声が高まり、四十数年前に学力調査結果を公表した時の混乱をまたくり返すのではないか」
  • 泉大津市:「(公表によって市町村に緊張感が生まれるとする府教委の主張は)一面的な見方だ」
  • 岬町:「数値を公表しなくても、課題を見つけ、緊張感を持って取り組んでいます」

 市町村教委担当者の声は全く当然のものです。これらの声は、決して杞憂ではありません。
「テストの点数は、学力のほんの一部を表す数値に過ぎず」(大阪市)・「テストの点数だけが学力のすべてではない」(高槻市)というのは、少しでも教育に知見のある者にとっては基本的で常識的な内容です。

 また、都道府県別の結果公表でも、テストの点数は学力のすべてではないという基本を全く無視して、順位を過剰視する風潮が広がっています。

 全国平均からみれば有意な差は認められず「統計上の誤差の範囲」に過ぎないにもかかわらず、順位が下位だったとして大阪府が通知を出す方針を固めたということ自体が、順位に振り回された結果と判断できます。市町村別の成績を公表することでは、順位を過剰視した傾向がさらに広がり、点数を上げることだけに特化したゆがんだ『対策』がおこなわれたり地域の序列化が進むなどの望ましくない結果が発生するだけです。

 実際に、都道府県独自でおこなった学力テストで地域別・学校別の成績を公表したところで、どのようなことが起こっているのでしょうか。

 東京都では「成績がふるわなかった学校に在籍している生徒が、クラブ活動で他校の生徒から成績を引き合いに出して馬鹿にされた」「(平均点を低くすることで)迷惑をかけるからテスト当日は欠席した」という事例がありました(参考:当ブログ2006/6/3『学力テストの順位付け:その弊害は』)。

 6月2日の衆議院教育基本法特別委員会での笠井亮衆議院議員(日本共産党)の質問によると、すでに統一の学力テストを実施して学校別の順位を発表し...

 また鳥取県では、「ある教科の平均点が思わしくなかったとして、保護者や地域住民が該当教科の担当教師を組織的に非難し、その教師が転勤に追い込まれた」「結果が悪かったことが原因で生徒が自信喪失し、成績公表以降生徒間暴力や対教師暴力が頻発した」ということも発生しています(参考:当ブログ2008/8/7『全国学力テスト成績公表、市町村教委・校長は否定的:鳥取県
』)。

 全国学力テストの市町村別・学校別データの開示をめぐって問題となっている鳥取県で、県教委は8月5日、市町村教育委員会や校長会との意見交換会を...

 市町村別の成績を公表することで、このような問題が新たに発生することは目に見えています。大阪府教委は方針を転換すべきですし、仮に通知がそのまま実行されたとしても市町村教委には非開示を貫くことが求められます。

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