部活動中の熱中症で後遺症、学校を提訴:鹿児島・神村学園

 「野球部の練習中に熱中症を発症し、重い後遺症が残った」として、鹿児島県の私立神村学園高等部の元野球部員(21)が8月7日に学園側を相手取って損害賠償訴訟を起こしました。

 事件は2003年8月22日、原告が1年生の時に発生しました。「地区予選に敗退した」として、当時の監督から、1周200メートルのグラウンドを100周走るよう命じられました。原告は重度の熱中症を発症し、途中で倒れて病院に搬送されました。約1ヶ月間意識不明の状態が続いたのち、低酸素脳症や高次脳機能障害の後遺症が残りました。
 原告は高校野球の特待生として入学し、プロ野球選手を目指していたということです。しかし事件後、入院加療のために留年を余儀なくされた上、卒業後も後遺症のために仕事ができない状態になったということです。
 なお当時の監督は、別の部員への暴力事件を起こしたことが2006年10月に発覚し、高野連からから1年間の謹慎処分を受けました。謹慎期間が切れた後に監督に復帰したものの、復帰直後に再び別の暴力事件を起こし、2008年3月に依願退職しています。
 学園側の態度も、とうてい理解できるものではありません。学園側の事故の調査では「部員が自主的にグラウンド50周した」ということにされてしまっています。また、あろうことか神村学園の神村勲学園長は、2007年3月の野球部員送別会の席上で、卒業生部員や保護者らのいる前で「熱中症は○○(原告)の持病だった」と発言したということです(『毎日新聞』鹿児島版2008/8/9)。医療や看護の素人にとっても、熱中症が「持病」ではないことぐらい常識の範囲内でしょう。こんなレベルの知識の人物が学園のトップ、しかも神村学園は医療福祉専門学校まで運営しているのだから、いやはや世の中不思議なこともあるものです。
 また神村学園では、2007年にはサッカー部監督による、部員への悪質な暴力・生徒いじめ事件が発生しています。
 これらのことを総合的に考慮すると、今回の熱中症事件も偶発的な事故とは考えにくいといえます。「暴力肯定と精神論・根性論に頼った指導」が最悪の形で現れた、学校運営・部活動運営のゆがみを端的に表したものだととらえた方が実態に即していると思われます。
 懲罰的なランニングを科すこと自体、一種の「体罰」と見なせる行為であり、極めて異常です。ただでさえ異常な行為である上、しかも真夏の炎天下という条件では熱中症の危険性も高まります。
 裁判を通じて、事実関係を明らかにしていくということはもちろん、事実関係の究明を通じてゆがんだ学園運営や部活動のあり方にについても大きくメスが入れられなければなりません。またこの学園だけの問題ではなく、日本全国の学校で教訓が生かされていくようにしていかなければならないと感じます。