専門家から指摘された問題点触れずに育鵬社採択:沖縄県八重山地区

 沖縄県石垣市教育委員会は9月17日、2016年度以降使用される中学校教科書採択にかかる議事録を公表した。

 石垣市と与那国町からなる八重山教科書採択地区では、中学校社会科公民的分野の教科書について育鵬社が採択され、問題になっている。

 育鵬社の公民教科書については、専門家からは「平和主義を否定する内容」「基本的人権より義務を強調している」と否定的な指摘がされている。しかし教科書採択協議会では、委員は指摘された問題点にはほとんど触れず、全委員が育鵬社を推したという。

 委員は育鵬社について「アイデンティティーが持てる学習内容」「全ての見出しに私たちが入り、理想の国や社会は私たちが努力して実現させていくという趣旨が示されている」などと言及した。しかし他の教科書についての評価や、育鵬社教科書で指摘されている平和主義や憲法に関する問題点については言及がなかったという。

 育鵬社教科書が、専門家の見解を無視してまで、政治的イデオロギー先にありきで強引に押し付けられているということを、ここでも改めて示していることになる。

 教科書は本来、記述の学問的な正確性、子どもたちの発達段階や理解度に合った記述になっているか・記述の難易度はどうか、授業者が特に力を入れたいテーマについての記述が充実しているかなど、そういった観点から選定されるべきである。

 他教科では調査会での答申がそのまま追認される例も多い一方、イデオロギーを押し付けたがる側が特にねらうような社会科歴史・公民では、学校側の評価をひっくり返してまで育鵬社が押し付けられることが多い。八重山地区もこの弊害が露骨に現れている。

 育鵬社教科書は安倍首相も推薦するとされ、安倍内閣との親和性も高い。大詰めを迎えている安保法制の国会審議では、安保法制が「立憲主義」の観点に欠けていることも指摘されている。育鵬社公民教科書も立憲主義の記述がないと、各方面から指摘されている。安保法制と教科書は一見するとかなり離れている問題に見えるが、右派勢力がねらう方向性という点ではつながっていることにもなる。

 八重山地区に限ったことではなく日本全国でも、政治の大きな流れにも注意をはらいながら、子どもたちにとってよりよい教育を求めていく観点で、教科書問題についてもしっかりと位置づけて世論を広げていく必要がある。

(参考)
◎育鵬社の問題点触れず 公民教科書、八重山採択協議会(琉球新報 2015/9/18)

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