沖縄戦「集団自決」教科書記述:06年検定意見撤回求める琉球新報社説

 『琉球新報』2015年6月21日付「<社説>軍命削除 教科書検定意見を撤回せよ」が、沖縄戦「集団自決」での教科書記述について鋭い指摘と主張をおこなっている。

 2006年度高校日本史教科書の検定(2007年3月公表)で、沖縄戦の「集団自決」について、日本軍による強制があったとする記述が軒並み消させられ、当時大問題になった。

 「オール沖縄」・無所属の仲里利信衆議院議員が、06年度の教科書検定意見を撤回するよう求める質問主意書を出したものの、安倍内閣は「検定意見を撤回しない」とする答弁書を閣議決定したことを、社説では紹介している。そのうえで、史実を踏まえて安倍内閣の姿勢を批判している。

 06年度教科書検定での背景には、大江健三郎氏の著作『沖縄ノート』に対する「岩波・大江訴訟」が提訴されたことがあげられている。「集団自決」は軍の命令だったとする記述に対して、軍人の遺族らが名誉毀損を主張し、同書の出版差し止めなどを求めた訴訟である。原告側の支援者には極右派も多くいて、教科書の記述を変えさせるために訴訟を起こしたことを原告関係者が自らにおわせるような発言をするなど、歴史歪曲の訴訟であることが指摘されていた。

 またこの訴訟が進行中にもかかわらず、原告側の主張と呼応するような検定内容が出されたことに、文科省担当者と極右派とのつながりも指摘された。

 『沖縄ノート』訴訟では、歴史研究の成果を踏まえ、「日本軍の深い関わりを否定できず、日本軍の強制、命令と評価する見識もあり得る」として、直接的に指示・指令したかどうかという次元にはとどまらないもっと広い意味で、戦時体制そのものが強制・命令の性質を持っていたとして、軍の関与を認めた判決が最高裁で確定している。

 この判決は歴史研究の観点から見ても妥当な見解である。しかし安倍内閣の答弁書は、歴史研究の成果、および『沖縄ノート』訴訟の結果を完全に無視したものになっている。

 現在は2015年、教科書検定問題が発覚してから8年あまりたっているが、歳月はたっても現在進行形の問題である。

 沖縄戦の「集団自決」記述については、歴史専門家の指摘や住民運動を背景に一定の記述回復はなされたものの、現在でも中学校社会科教科書も含め、強制とははっきりと記載できない状況が続いている。7~8月にかけて採択が予定され来年度から使用予定の2015年版中学校社会科歴史教科書についても、行間から強制・軍命を浮かび上がらせようと工夫している教科書は一部にあるものの、強制・軍命などと明確な表現を使用してはっきりと記述している教科書はない。

 『琉球新報』の社説では以下のように締めくくっている。

 「軍隊は住民を守らない」という沖縄戦の教訓をゆがめ、消し去ろうとする行為は犠牲者と歴史に対する冒涜(ぼうとく)である。沖縄戦の実相の書き換えを許さず、住民の犠牲から導かれた教訓を後生に継承していくことを誓いたい。

 まさにそのとおりである。そのためには、史実を厳密に記述し伝えていくような教科書の記述も求められるし、不適切な検定意見は撤回されるべきだろう。