「憲法記述に誤り含む」育鵬社公民教科書不採択求める声明:神奈川県内の弁護士4団体

 神奈川労働弁護団・社会文化法律センター・青年法律家協会弁護士学者合同部会・自由法曹団神奈川支部の神奈川県の弁護士関係4団体は6月12日、2016年以降使用する中学校社会科公民的分野の教科書について、神奈川県内の教育委員会に対して育鵬社版を採択しないよう求める声明を共同で発表した。

 神奈川県では前回、横浜市と藤沢市で育鵬社版公民教科書が採択されている。採択地区としては日本最大でもある横浜市で採択されたことで、神奈川県内では育鵬社のシェアが生徒比で4割という異常な状況になった。横浜市では前回教科書採択の際に育鵬社支持派が策動し、従来各行政区ごとに18採択地域を設定していたものを全市1区に統合するなどしていた。

 弁護士団体の声明では、「憲法に関する記述で法律家として見過ごせない誤りを含んでいる」などとしている。具体的には、育鵬社教科書には「人権は公権力に侵されてはならない。人権を保障させることを国家に約束したのが憲法」という視点がないなどを指摘している。

 確かに、育鵬社教科書、およびその亜流の自由社教科書の日本国憲法記述には、通説とは異なる異様なものを感じる。

 日本国憲法の成立過程の説明については、歴史・公民とも、いわゆる「押し付け憲法論」に立脚した特異な記述となっている。他にも、基本的人権の説明はそこそこに天皇の地位や公共の福祉を必要以上に強調しているなど、異様な説明をおこなっている例も目立つ。国旗・国歌の説明についても、押し付けをめぐる人権問題は存在しないことかのように、尊重するのが当たり前という前提を一方的に明記し、価値観を一方的に押し付けている。

 こういった教科書を使わせることは、通説とはかけ離れた特異な憲法観を養うことにつながりかねず、非常に危険である。声明では育鵬社教科書の憲法記述は「受験にも影響が出る」とも言及しているが、もちろん受験でも悪影響だし、さらにその先の未来社会という意味でも有害である。

(参考)
◎育鵬社教科書の不採択を要請 県教委に法律家4団体(神奈川新聞 2015/6/13)
◎「育鵬社教科書では憲法学べず受験に支障」 神奈川の弁護士団体、不採択を要望(産経新聞 2015/6/12)