中学校公民教科書:東日本大震災の記述が異様な育鵬社

 中学校社会科公民的分野の教科書では、どの教科書でも東日本大震災に触れる記述をおこなっている。

 前回2011年採択でもっともシェアが多かった東京書籍版では、2015年教科書では「東日本大震災からの復興と防災――仙台市を例に考える」(112-113ページ)として見開き特集を組み、被害状況や復興計画、防災対策について、仙台市での具体例をあげながら客観的に紹介している。

 また日本文教出版版でも、「大災害に強いくらしをきずく――東日本大震災における取り組み」(104-105ページ)として、自助・共助・公助の3つのキーワードを軸に、防災対策について紹介している。

 一方で極右教科書の育鵬社版にも東日本大震災の記述があるが、全く異様な内容となっている。防災対策などは曖昧な形で、「自分を犠牲に住民守った公務員」「感動与えた日本人の秩序」といった感情的な煽りに終始している。

 前者は東日本大震災で住民の避難誘導に携わった際に殉職した役場職員や警察官の話をあげ、後者ではあれほどの大混乱だったのに被災者の暴動などが起きなかった日本はすごいと外国から賞賛された話をとりあげている。

 殉職や秩序などを美談にするだけでは、防災対策を考えるにしては十分とはいえない。各所で起こったエピソードの収集自体は必要でも、まともに分析せずに美談化一辺倒の扱いをするのは、防災対策を考える際に著しくバランスを欠くものである。生徒や国民を社会を創る担い手としてみるのではなく、支配階級にとって都合のいいように動く「駒」としてしか見ていないのではないかという貧相な人間観も透けて見える。