『沖縄ノート』訴訟、原告訴え棄却

 作家・大江健三郎氏の著書『沖縄ノート』で「沖縄戦で『集団自決』を命じた」かのように書かれて名誉を傷つけられたとして、元日本軍軍人が大江氏や発行元の岩波書店を訴えていた訴訟で、大阪地裁は3月28日、「原告らが直接命令したかどうかは確認できないが、旧日本軍全体として集団自決を命じる体制はあった」などとして名誉毀損を否定し、原告の請求を棄却しました。


 この判決は「日本軍全体として住民を集団自決に追い込む体制が作られていったことを指して『集団自決』強制としている。個別の隊長の命令の有無を問うのは別次元の問題」とする歴史研究の到達点に沿ったものでもあり、極めて常識的な判決です。
 一方で文部科学省はこの訴訟を理由のひとつとして、高校日本史教科書の検定で「『集団自決』強制はなかった」という修正を強要しました。また原告を支援する側は「教科書の記述を書き換えさせるために訴訟を起こした」かのようなこともほのめかしていました。
 こういう主張は歴史研究の到達点からみた反論のほか、それ以前の問題として「こういう主張をおこなう人がいることは少なくとも1970年代から知られていたこと。2000年代に入って提訴された訴訟を理由にして、『集団自決』強制はないという根拠にすることは成り立たない」という角度からも反論され尽くされているものです。今回の判決の結果からも、文部科学省が教科書検定でおこなった主張には道理がない、文部科学省の教科書検定の態度は特定の政治的思惑を反映しておこなったものであることが、改めて浮き彫りになっています。