教科書採択:教員の意見で採択候補「絞り込み」禁止通知

 小中学校の教科書の採択に際して、文部科学省が、教育委員会の採択の前に教員らが推薦する教科書を事前に絞り込む行為を禁止する通知を出していたと、『産経新聞』2015年4月9日付が報じている。

 教科書採択にあたっては、現場の学校教員らが教科書調査員となって各教科書の特徴を比較研究し、推薦教科書を1~数種類ピックアップすることがおこなわれてきた。しかし文部科学省はこれを「採択権は教育委員会にある。違法」と決めつけた。

 違法というのは難癖である。子どもの実態や教科書記述の背景となる学問研究の成果に精通していて、また実際に授業をおこなう教員が、教科書の特徴をまとめて比較したほうがより実態に則した比較研究ができるものである。必ずしもすべての校種のすべての教科・分野の教科書に精通しているわけではない教育委員にとっても、判断材料がなければ困ることになるだろう。

 これは、政治的観点から特定の教科書、特に社会に関する内容で特定の価値観を押し付けるための教科書を採択させるための準備とみなしてもいいだろう。育鵬社や自由社のいわゆる「つくる会系」極右教科書の支持者が、教科書採択の仕組みを敵視し、現場教員の意見を排除して教育委員がトップダウン的に採択すべきだとしているのと軌を一にした動きである。学問的・教育的には相手にされないレベルのトンデモだから、強権的に押し付けようとしているのである。

 社会に関する内容を扱う社会科の教科書が標的にされるのは予想がつくが、この他にも社会に関する内容に触れて、一部の政治勢力にとっては目の敵にする内容も含まれるような家庭科(特に家族などの内容)・保健(性教育など)といった教科・分野も標的にされるおそれがある。

 安倍政権自身も各分野で極右タカ派的な傾向が目立つが、教育分野でも例外ではない。前回の安倍政権では改悪教育基本法が成立した。一度首相を辞めて後年に復帰した現安倍政権でも、沖縄県八重山教科書問題での極右的な対応・価値観押し付けの道徳教育の教科化など、タカ派的な動きが目立っている。その動きを反映したものだと言え、極めて危険である。