大阪維新は大阪市の教育「改革」で何をしたのか

大阪維新の会が大阪市長選挙(2015年11月22日投開票)を踏まえ、「大阪改革実績集」として、大阪市での「改革」の成果をウェブサイトにアップしています。( http://oneosaka.jp/news/2015/11/08/1925.html )

しかし中身を読むと、実際は前市政までに準備されていたものを、橋下徹市長と大阪維新の会が自分たちだけで一から作ったかのように言い立てたり、改悪といえる内容を「改革」と吹聴しているようなシロモノでした。

教育や子どもに関連する分野について、維新が「実績」としているものについて、実際にはどうなったかを見てみましょう。嘘・大げさ・紛らわしい表現が目立ちます。

◆「教育行政基本条例の制定」「市立学校活性化条例の制定」

いわゆる教育基本条例です。制定の際に2条例に分けられましたが、これは行政や校長のトップダウン方式の学校運営を強める内容のものとなっています。なお、この条例を中心になって起案したのが、橋下徹市長の後継者として大阪維新の会から大阪市長選挙に出馬している人物です。

同条例に基づく「市長と教育委員の協議の定例化」も「実績」と自慢していますが、国に先駆けて導入されたこの制度で、教育委員会の意向を橋下氏がひっくり返し、教育委員は橋下氏に従って態度を変えるなどの混乱も生まれました。

◆「全国学力・学習状況調査の結果から明らかになった現状等の公表」

教育学的な手法で現状分析したようにも取れる差し障りのない表現になっていますが、実際はテストの学校平均点を公表するよう各学校に求めただけです。テストの平均点だけが独り歩きするのは、本当の意味での学力向上ではありません。

◆「学校選択制の導入」

学校選択制は全国的には2000年代前半頃に導入する自治体が相次ぎましたが、導入した自治体ではわずか数年で「特定の学校に入学志願者が偏る」「学校と地域とのつながりが薄くなった」などのデメリットが指摘され、廃止や縮小に切り替える自治体も相次いでいます。

大阪市では橋下市政のもとで、全国的に下火になった学校選択制を持ち出しました。大阪市は各行政区ごとに住民説明会をおこなったものの、住民からは学校選択制に批判的な意見や慎重な意見が相次ぎました。有識者や市民らで作る委員会でも導入に否定的な答申を出しました。しかし橋下市政のもとで導入が強行されました。

学校選択制賛成の意見として「通学先に指定されている学校よりほかの学校のほうが近い」「いじめなどからの避難」などもあげられましたが、それらは通学区域弾力化など別の措置で十分に対応可能です。

◆「校長公募の実施」

大阪市の校長公募では、問題が続出しました。初年度に公募で就任した校長のうち約半数が、不祥事や不適切行為に関与したという異常な状況でした。「英語教育のエリート教育をしたかったのに、普通の学校に着任し、基礎学力向上の課題に取り組むのは気に入らない」とばかりの捨てぜりふを吐いて辞職した人物を皮切りに、セクハラ、パワハラ疑惑、不適切発言、学校の課題は教頭などに丸投げで校長室から出てこずに学校が荒れる、など、通常では考えにくいような問題が続発しました。

◆「中学校給食の実施」

橋下市政になった2012年4月より事業がスタートしたものの、事業を準備していたのは前市政でした。平松邦夫市長(在任2007年12月~2011年12月)は中学校給食の実施を掲げていましたが、当時大阪府知事だった橋下徹氏が大阪市への中学校給食の補助金を拒否するなどする困難があったもと、任期の最後の2011年9月議会で弁当方式での選択制給食の予算が実現することになりました。しかしその直後の大阪市長選挙で平松氏が落選し、橋下徹市長に交代しただけです。

◆「平成26年4月から、すべての区において新1年生から段階的に全員喫食または全学年での全員喫食に移行」

中学校給食については、橋下氏は「自分の実績。前市長は何もしなかった」と攻撃する一方、実際に実施すると「おかずが冷やされた状態で提供されておいしくない」など課題が指摘され、利用率が低迷しました。橋下市政のもとでは、指摘された問題点に目を向けることなく、「全員給食を強制すれば必然的に利用率100%になる」という安易な発想で、2014年度より全員給食に移行させました。その結果中学生からの不満は増大し、また異物混入問題なども相次ぎ、問題を拡大させた形になりました。

◆「小中学校の普通教室への空調機設置」

これも前市政が方向性や予算をつけたものに、そのまま乗っかっているだけに過ぎません。前市政時代に教室の実地調査をおこない、空調設置が必要と判断し、2011年9月議会で中学校普通教室への予算がつきました。前述の中学校給食と同様、予算をつけたのは前市政ですが、実施の時にはたまたま市長が橋下氏に交代していたというだけです。その後小学校にも拡大しましたが、前市政の路線を継承したといえるもので、大阪維新の会の人たちが言うように「前市政までは何もしなかった。橋下・維新になって初めて改善した」というのは不正確です。

◆「学校教育ICT活用事業」

学校現場の要望から出たものではなく行政主導でつけられたものであり、使いこなせない・トラブル続出などの問題も出ています。

◆「施設一体型小中一貫校の整備」

むくのき小中一貫校(東淀川区)・やたなか小中一貫校(東住吉区)を「小中一貫校として整備した」としていますが、この2校については、前市政時代に小中一貫校改編の方向がまとまっていたもので、たまたま改編時期が橋下市政の時代だったにすぎません。教育学的には小中一貫校自体に批判的な論考もありますが、前市政では地域の小中連携の延長線上での小中一貫校を構想していました。

しかし橋下市政になると「エリート校」として改編することを打ち出しました。また、かねてから地域の児童数減少で小学校統廃合も検討されていた地域に目をつけ、統廃合のついでに「エリート校」化する新たな小中一貫校構想も打ち出しました。地元住民からは「エリート校よりも、地域の子どもの実情にあった教育の方がいい」など不安の声も聞かれました。

◆「近現代史を学ぶ施設の基本構想の策定(調査・検討)」

差し障りのない表現になっていますが、実際は「ピースおおさか」の展示を「自虐的」と攻撃した歴史修正主義の立場から、展示内容を変更するよう求めた経緯があり、その路線の延長線上にあるものです。

◆「保育ママ事業の拡充」

保育ママ事業は、資格認定や施設の認定も極めて簡易なものであり、事故のリスクが高くなることが指摘されています。隣の八尾市では「保育ママ」絡みの死亡事故もあり、民事訴訟で係争中です。

◆「保育所面積基準の緩和」

この表現では、予備知識がなければよくわからないかもしれません。これが何を意味するのでしょうか。保育所には児童一人あたりの最低の床面積が定められています。大阪市では国の最低基準よりも余裕を持った基準で運用されてきましたが、橋下・維新市政のもとで、その床面積の基準を国基準よりも小さくするように改悪し、同じ保育室により多くの児童を詰め込むことができるようにするということです。

保育団体がおこなった「保育面積基準緩和」の実証調査では、児童同士がぶつかるなどしてけがをするリスクが高くなる、保育者の目が届きにくくなるなどの弊害が指摘されました。

◆「塾代助成事業」

いわゆる「塾代バウチャー制度」です。バウチャー券を利用すれば学習塾や芸術教室などの習い事に使える、保護者の自己負担は大幅縮小されるという触れ込みです。市内のある区で試行実施したものの、利用率は低迷しました。学習塾や習い事が悪いとはいいませんが、まずは公教育を充実させるのが行政の責任ではないでしょうか。


このほか、維新の「実績集」では触れていない内容として、市立幼稚園の廃止・民営化を狙って繰り返し議案を出している、市立保育所の保育料を私立並みに値上げ、「子どもの家」事業への補助金廃止などもあります。