大阪市中学校給食:産経新聞がピント違いの記事

 大阪市の中学校給食。橋下徹大阪市長の肝いりで導入されたものの、デリバリー弁当方式のためにおかずが冷えている、異物混入続出などの問題が相次ぎ、選択制の時代には選択率が低迷した。この根本を抜本的に改善しないまま、全員給食を強行している。

 中学校給食の導入自体は否定はしないし、適切なやり方で導入されるのならばむしろ推進されるべきだろう。しかし、大阪市でのやり方はあまりにもひどく、制度の再設計が望まれている。

 大阪市の中学校給食について、産経新聞がピント外れの記事を出している。2014年11月7日付『橋下市長の信念、中学給食 迎合は食育にあらず、育むのは舌より心と体』という記事。

 見出しなので色々と詰め込みすぎていてややこしいが、「橋下市長の信念」はおそらく「中学給食」のみにかかっていて記事本文では橋下氏の発言や主張には一切触れられておらず、大阪市の中学校給食についての産経新聞編集部の見解が述べられている。

 記事の中身は、大阪市での学校給食の問題点の本質から目をそらし、子どもの好き嫌いが不評の原因かのように問題を矮小化している。その上で「子どもだったら好きなものを食べたいと言うだろうし、子どもの口にあわないことは責めても仕方がない」かのような予防線を張りつつも、大阪市教育委員会は子どもの味の好みのわがままに迎合している、子どもに配慮する必要はないと言わんばかりに言い立て、「舌を育てるよりもまずは心と体」といいながら一方的に押し付けるのが教育だと主張している。

 この内容は、残念なものだと言わざるをえない。産経新聞の子ども観が露骨に現れているものだといえる。

 問題の本質は、まずいものをがまんして食べろというようなくだらないことではない。大阪市で中学校給食が不評なのは、デリバリー方式によるシステムそのものに問題点がある。食中毒防止のための法的および技術的な制約で、おかずがキンキンに冷やされて出てくる。カレーライスはレトルトパックをご飯にかける。また弁当方式のために個別の生徒にあった量の調節ができない。――などのことが、不満の原因となっていると聞く。

 これらのことを「我慢しろ」の一言で片付けても、建設的ではない。これを我慢することが食育だとすり替えても、結局は橋下市長・大阪市教育委員会の失策を批判するな、給食の質は改善するな、黙って従えというのとほぼ同義になってしまう。

 また食育は、産経新聞が主張するように「舌を育てるよりもまずは心と体」という訳の分からない二分法ではない。舌も「心と体」は一体のものであり、わざわざ分けるのも理解に苦しむ。

 大阪市での中学校給食の問題は、自校調理方式や、少なくとも給食センター方式、もしくは近隣の小学校で一緒に調理する親子方式などの導入で、かなり改善されるものである。またデリバリー弁当方式でも、他の自治体ではスチーム式レンジを導入し、配膳直前に温めなおす工夫をしているところもある。これらの改善をしなければどうしようもない。「不満があっても黙って食べろ。それが食育だ」と感情論・根性論にすり替えても、無意味だろう。