全国学力テスト:都道府県別成績公表ですら波紋

 全国学力テストの都道府県別成績が公表されたことが、波紋を呼んでいる様子です。


 地方紙の記事をインターネットで検索してみると、「教育県の面目を維持」「「教育県」に警鐘?」などとした見出しが踊っているのを見かけました。
 1度の学力テストの成績ひとつのみで「教育県の地位」を論じるのは、教育への理解を欠いた行為です。学力テストの成績だけが教育のすべてではありません。また、学力テストで測れる学力は全体のうちの一部分であり、しかもテスト実施時点のものにすぎません。
 また、成績が最下位クラスになったある県では、これまでの県の教育政策を批判する抗議が教育委員会に届いているとも報じられています。これも全く無意味でばかばかしい抗議です。
 都道府県別の成績公表をおこなっただけでこのような有様です。仮に市区町村別や学校別の平均点まで公表してしまえば、どのような恐ろしいことになるのでしょうか。
 重要なことは、他者との比較ではありません。一人一人の児童・生徒がどこを理解しどこに弱点があるかをていねいに見極めることです。平均点に過剰に固執することは、一人一人の児童・生徒の姿を見えなくするものです。
 また都道府県別の平均点についても、順位や序列を付けられるようなものではなく、統計上の誤差の範囲内といっても差し支えないような範囲に収まっています。数字を絶対的なものとして扱って、「全国平均より上回っている」とか「下回っている」ということに執着することや、順位や序列を付けることは、教育学的には全く無意味な行為です。むしろ順位や序列化は、もともとの根拠があやふやだという根本を無視し、序列や格差が絶対的な事実とすり替えているという点で全くの有害な行為です。
 今回の全国学力テストでは、都道府県別成績すら公表する必要はなかったと改めて感じます。またそもそも、「実施と成績返却との間が開きすぎていて、児童・生徒への還元が困難」「全体的な傾向ならば抽出調査で十分」「プライバシーに関わる生活調査もされた」「テスト成績向上のための対策がいくつかの県で実施された」などのほかの重要な問題点も加味すると、現在の全国学力テストのやり方そのものが愚行だといって差し支えなく、現在のようなやり方を続けるのならば中止すべきだと改めて感じます。