「体罰」への損害賠償:福島県と郡山市の不毛な争い

 福島県郡山市立行健中学校での「体罰」事件(2001年5月発生)に関して、2004年10月に民事訴訟で被害生徒への損害賠償義務が確定し、被害生徒へ賠償金約50万円を支払った福島県は、教師の監督責任は郡山市にあると主張し、生徒に支払った賠償金の補償を求めて、2月14日に郡山市を提訴したということです。

 この「体罰」事件と訴訟の経過は、以下の通りです。

  • 国語担当の男性教諭は2001年5月、授業を担当していた2年生のクラスで「授業中にクラスが騒がしかった」として立腹。
  • 教諭はこのクラスの学級副委員長だった男子生徒(被害生徒)に対し、「前に出ていすの前にたち、静かにさせろ」と命じた上、授業を途中でうち切ってこの生徒をトイレに連れ込み、生徒に対して怒鳴りつけた上に足蹴りを繰り返した。
  • 加害教諭は、「『体罰』を他言すれば高校受験をできなくしてやる」などと、生徒をさらに脅した。
  • 被害を受けた生徒は、このショックで不登校に追い込まれた。
  • 被害生徒はその後、「『体罰』で精神的損害を受けた」として、福島県と郡山市を相手取って提訴。
  • 福島地裁郡山支部は2004年7月、福島県と郡山市が連帯して、被害生徒に対して連帯して50万円を支払うよう命じる判決。
  • 双方が控訴。仙台高裁は和解を勧告。郡山市は和解に応じたが、福島県は和解を拒否。地裁判決が確定し、福島県の損害賠償義務が残った。

◎参考:『「体罰」データベース』・福島県郡山市立行健中学校(2001.5)
 福島県は「教師の管理責任は、学校設置者の郡山市にある」と主張し、また郡山市は「教師の人事責任は、採用者の福島県にある」と主張するという構図です。すなわち、お互いに責任のなすりつけ合いをしている構図といえます。
 加害教諭の不法行為に対する責任は、加害教諭本人に加えて、県と市の両方にあるといえます。賠償金相当額の補償は、本来なら加害教諭本人に請求すればいいような気もしますが、加害教諭本人に対する損害賠償義務を負わせることは現行の法律では困難なことから、採用者である県・設置者である市が共同責任を負うべきで、どちらか片方の責任だけを問題視しても不毛な争いにすぎません。今回のケースでは、福島県が和解拒否したために、県のみの賠償義務が確定したという結果になったといえます。
 福島県と郡山市との間の争いは「勝手にやってくれ」といいたいところですが、考えてみれば裁判費用は税金から出るわけで、こんな不毛な争いは郡山市民・福島県民の納得が得られるのでしょうか。
 また、責任のなすりつけ合いばかりして、本来の問題である「体罰」問題が後ろに押しやられているという印象を受けます。本来なら、県も市も共同して「体罰」廃絶に力を入れるべきではないかと思います。

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