一歩踏み込んだものの、まだ不十分:栃木いじめ自殺訴訟

 栃木県鹿沼市立北犬飼中学校3年生だった男子生徒が1999年にいじめを苦にして自殺した事件で、東京高裁は3月28日、いじめと自殺との因果関係を認めなかった一審宇都宮地裁判決(2005年9月)を変更し、いじめと自殺との因果関係を認める判決を出しました。その一方で判決では、一審に引き続いて、いじめを放置してきた学校の責任を認めませんでした。


 この事件は、同級生らから継続的に暴力をふるわれたり同級生の前で下着を脱がされるなどのいじめを受け続けた生徒が、不登校やうつ病を発症した末に1999年11月に自殺したものです。加害者とは法的には和解が成立したものの、加害者からの謝罪は全くないということです。また学校や鹿沼市教育委員会も、自殺した生徒に責任をなすりつけるような態度をとり続けています。『毎日新聞』の報道によると、鹿沼市教委幹部は自殺した生徒や遺族について「被害者と考えていない。自殺ではなく事故だ」と放言したということです。こんな発言は職務上の立場以前に人として断じて許されない、悪質な発言です。遺族が泣き寝入りすればそれでよいとでも考えているかのような、加害者や学校・市教委側の卑劣な態度には怒りすら覚えます。
 本来ならば学校や市教委はこの事件に誠実に対応した上で、同様の事件の再発防止を教訓化すべきです。しかしこれでは、遺族をさらに傷つけた上、いずれは第二・第三のいじめ被害者がでるという最悪の状況すら起こりかねません。
 裁判では、いじめと自殺との因果関係を認めたのは一歩前進ですが、いじめを放置してきた学校の責任という重要な点を認めなかったのはきわめて残念なことです。ただでさえいじめ自殺という目に遭わされた被害者や遺族に対し、被害の救済どころか追い打ちをかけるような仕打ちにすら見えます。
 遺族側は上告の方針を固めているということです。上告は当然でしょう。この訴訟は、遺族への被害者救済というだけにとどまりません。いじめ問題について、いじめそのものを未然に防いだり早期に対応できる体制をとったり、またいじめ被害に遭った際の加害者や学校・教育委員会からの二次被害を防ぐという面からも、最高裁でいじめを放置してきた学校の責任が認められるような適切な判決が出ることが強く期待されます。