ABCラジオ「ニュース探偵局」から学校事件を考える

 大阪のABCラジオ(朝日放送、1008kHz)で、「ニュース探偵局」というラジオ番組が放送されています。

 この番組は、時事問題など注目のニュースについて、当事者へのインタビューをおこなう形式の番組です。2007年3月17日の放送(3月20~24日に再放送)では、「全国学校事故・事件を語る会」の代表の方にインタビューしています。

 折しも、福岡県北九州市で2006年3月16日、教師からの暴力の直後に小学生児童が自殺した事件について、事件の1年後の2007年3月15日に両親が提訴したことが報じられました。(福岡県北九州市立青葉小学校事件

 今回のインタビュー対象の方も、1994年9月に兵庫県龍野市(現・たつの市)で、同じく教師からの暴力の直後に当時小学生だった息子さんが自殺しています(兵庫県龍野市立揖西西小学校事件)。インタビューでは、この事件の体験を中心に語っておられます。

 放送の要旨がABCラジオのホームページに文章化されてアップされていますので、ぜひ多くの方に読んで考えていただきたいと思います。また3月31日頃まではABCラジオのインターネットラジオ「webio」でも放送を聞くことができます。

学校事件での被害者への責任転嫁の手口

 インタビューによると、学校で事件や事故が発生した際、学校側が事件・事故を隠して被害者に責任転嫁する手口が、手に取るようにわかります。

 1994年の自殺事件についても、事件直後は教師は「自分の暴行が原因ではないか」と認めて錯乱状態になり、その様子を不審に思った警察が事情聴取するまでになりながらも、わずか2日後にはそのことを翻したということです。この背景には、教育委員会からの圧力があったと分析されています。

 このインタビューでは、事件について地域をあげての嫌がらせ策動も克明に述べられています。

 一番大きなきっかけというのは、報道に息子の事件のことが出たことですね。『体罰の直後に自殺』みたいな形で報道が出ると。僕らは報道が一度出ると、他の報道機関から取材を受けますから、それに追われていましたが、そうすると地域を挙げて小学校、西小学校と言うんでが、『西小学校を育てる会』みたいなものが作られるんですね。地域の有力者を挙げて。

 自治会や老人会、婦人会、全組織を動員したような形で集会が立ち上げられて、で、そこで追悼会をやるから出て来いと。

 で、その中のことなんですけど、その会は、原因とか何があったかを明らかにする会じゃないんだと。西小学校があたかも色々な報道でとんでもない学校のように言われているから、西小学校を守っていかなければならないと。名誉回復するんだと。これは、そういう集会だったんですよ。

 ところが、原因究明とか、そういうことをせずして沈静化かけられたら、どうしようもないじゃないですか。

 ただ、僕ら、怖かったのは、地域全部を挙げてなんですよ。もう老人会も婦人会も自治会長も全部集められて、有力者を全部集めて、教育委員会も乗り込んでやっているんですよ。地域の人もね、そういう風に集会に出されて、例えば僕らが『何があったか明らかにしてください』と言っていることがおかしいと(なるんですよ)。PTAの方もそうだし、『育てる会』の人もそうだし、そういう風になったのは、そういう風になるような情報がね、意図的に行政とか、沈静化かけようとしている人たちから流されていたようなんですね。これも後になってわかったんですよ。

 だから、単に(人を)集めてやるだけではなしに、遺族とか被害者を押さえ込むために、周りを敢えて動かす。で、周りが、遺族の言っていることがおかしいんだよと思えるような情報を流していくわけです。

 このインタビューひとつとっても、被害者に二次被害を生む手口の悪質さ・陰湿さが、手に取るようにわかります。

 児童・生徒の自殺、教師の暴行など、この手の学校が絡む事件では、被害者やその関係者を「意味不明のことをわめき立ててマスコミと結託して学校を攻撃し、混乱を作っている元凶の極悪人」かのように描いて二次被害を与える手口はよくあります。いろんな事件の例を見れば、被害者攻撃マニュアルでもあるのではないか・過去の類似事件の関係者に被害者攻撃法を指南してもらったのではないかとすら錯覚するほど、この手の事件では一定のパターンでの被害者攻撃が繰り返されています。しかしそれぞれの事件の関係者にとっては、たまったものではありません。

 被害者にとっては、事実関係を知りたいというのは最低限の願いです。しかし事実を知られることが不都合な連中が意図的に嘘の情報を流して学校や行政の責任を不問にし、被害者を「学校や地域に敵対する極悪人」扱いして孤立させています。こういうことは、決してあってはならないことです。

 そして学校や行政の責任を不問とすることで、被害者が悪いかのような方向にもすり替えられていきます。この事件でもそうだったということです。

学校事件・事故の裁判は、それしかないところまで追い込まれてやむなしに起こす

 1994年の事件でも、のちに提訴に踏み切りました。インタビューでは、裁判にいたるまでの過程についても述べられています。

……実際には、ありとあらゆることをやったんですよ。もちろん、初め、学校とも何度も掛け合いました。ところが、全然話にならない。と言うよりも、最後は何も話してくれなくなるわけですよね。何を言っても。

 つまり、事実というのは、当然、何があったかを知って、それが相手方も、世の中も『そうですよ』と認めることだと思うんですよ、事実を明らかにするというのは。

 ところが、ある程度、こちらが一所懸命調べることによって状況がわかってきたんだけど、相手はいっさいそれを認めようとしない。『自殺とそれ(暴行)とは関係が無い』、『わからない』という立場をとっていますね。

 だから、いきなり裁判をしたわけじゃないんですよ。ずっと、やって、やって、やって、結局はこのまま泣き寝入りをするのか、相手を引きずり出すためには、1個人としては民事訴訟という手段に頼る以外、他にないんですよね。

 やるだけやってみて、ものすごく抵抗があったんですよ。つまり、お金を払えという訴訟でしょう? 自分の子供の命にお金を払えということで……。『そんなんじゃないんだけどな……』と。でも、手段としてそれしか残っていないと。泣き寝入りするのか、そこまでやるのかと。

 ……結局、やろうと。一生後悔したくないからと思って、やりましたね。それしか手段が無かった。今もそうなんですけど。

 だから、よく間違えられるんですけど、すぐ親は学校裁判とかやると(言われる)。クレームをつけて、1つ間違えたら『裁判するぞ』とやるって。

 本当にそうなのかって。そんな生半可な理屈でね、地域全部的にまわしてね、勝てないかもわからない、事実が明らかに出てこない状態で裁判を起こせるかって言うんですよ。

 そうじゃないです。つまり、人としての尊厳を賭けて、やるかやらないか。自分がやっていることが正しいと信じられないと、そこまではできないです。

 この手の被害者攻撃でよくありがちなせりふとして「金目当て」とか「クレーマー親」「攻撃することが自己目的」などという中傷があります。しかし、事実は全くの正反対です。

 相手が不誠実な態度をとって態度を硬化させるから、やむなく裁判という形で事実を明らかにしなければならないところにまで被害者が追いつめられていく。これが真実です。

 逆に言えば、学校や行政関係者は「被害者の立場に立って誠実な態度をとれば、こじれることもない。もみ消そうと策動する学校や行政の態度が、問題をややこしくさせる」ということを理解すべきでしょう。また、トラブルをもみ消すことが行政の手腕として評価されるということもインタビューで指摘されていますが、そういう誤った評価についても変えなければなりません。

類似事件・北九州市の事件

 先日提訴された北九州市の児童自殺事件についても、経過が1994年の兵庫県の事件と酷似しています。報道では表に出ていませんが、兵庫県の事件で起こったような被害者攻撃が執拗に続いたことは容易に推測できます。また北九州市の事件でも、本来なら学校や市教委が誠実に対応すればそれで済んだはずなのに、学校や市教委が悪質な態度をとったために問題がこじれ、やむにやまれず裁判を起こさざるを得なかったものだといえるでしょう。

 当ブログには以前にも、教師の暴力事件やいじめ事件を取り上げた際に、被害者攻撃の中傷コメントが寄せられることは何回もありました。北九州市の事件についても、何かの手違いでYahoo!Newsのトップページに「関連サイト」として載ってしまった(あとで気付いてリンクを切ってもらいました)ことで約1万5000件のアクセスと百数十件のコメントが殺到し、うち3分の1ほどのコメントが被害者への中傷でした。

 当ブログですらこんな状態だから、直接の被害者の方となると、中傷や嫌がらせの数も想像を絶します。手口としては、インタビューで触れられている兵庫県の事件と同様なことが起こっていることは容易に考えられます。

 被害者への嫌がらせや中傷を絶対に許さない――そういった世論を広げていくためにも、今回の北九州市の事件と酷似している兵庫県の事件にスポットを当てた「ニュース探偵局」のインタビューは有意義なものです。学校関係の事件での被害者中傷のメカニズムや、中傷を広げる連中にだまされない方法・中傷に加担しない方法などを、インタビューを通じて多くの人に考えていただければと思います。