大阪府泉佐野市でも『はだしのゲン』回収、校長会が抗議

 大阪府泉佐野市教育委員会が、市立小中学校図書室の『はだしのゲン』の蔵書を回収していたことがわかった。「大阪維新の会」系の千代松大耕市長が「差別的な表現が多い」と同書に否定的な見解を示して市教委に要請し、教育長が指示して回収させたという。


 報道によると、千代松市長は『はだしのゲン』の作品中に「きちがい」「乞食」「ルンペン」などの単語が出てくることについて、差別的で問題が多い・人権教育を推進する観点からは問題と教育長に伝えた。教育長はそれを受け、2013年11月に一部の学校に対して「市長が『ゲン』を問題視している。図書室から校長室に移して子どもらの目に触れないようにしてほしい」と口頭で要請した。
 教育長は2014年1月には、蔵書を保有する小学校8校・中学校5校の校長に対し、蔵書を市教委に持ってくるように指示した。
 市立学校校長会は1月23日、「いかなる理由があっても、市教委が一方的に蔵書の閉架や回収を行うことは校長として違和感を禁じ得ず、到底受け入れられない」などと強く抗議する文書を、教育長に手渡した。
 しかし教育長は譲らず、「閲覧記録を確認するなどして読んだ子を特定し、個別に指導できないか」などと発言したという。
 校長会はさらに反発を強め、「不適切な表現があるからといって一律に閲覧制限をするのは教育になじまない」「大量の蔵書から不適切な表現が含まれる作品を拾い出し、語句を逐一訂正指導するようなことは不可能」と再度抗議した。
 『はだしのゲン』については、歴史修正主義的な立場からの閲覧妨害が、島根県松江市などでおこなわれた。また極右団体などからも、学校図書室からの撤去を求める請願が各地で出されるなどしている。
 今回の問題については、そういう右派的な指摘からでの妨害が通じないから、「差別表現」に難癖をつけることを思いついたものではないかと感じる。
 しかし「差別表現」と言っても、差別的な意図をもって浴びせられた暴言ではない。現在ではたしかに、不適切と感じる人が多い表現ではあるが、作品の描写の対象とされている時代や作品刊行当時の時代背景によるものである。「人権教育」を恣意的に振り回して「言葉狩り」のようなことをしてはいけない。
 また首長の行政介入という点からも問題を残す。千代松市長は大阪維新の会系として2011年に初当選した。これまでにも維新の会の教育政策をなぞるように、教育分野でも「卒業式・入学式での日の丸・君が代の起立斉唱義務付け」「全国学力テストの学校別成績公表」「教育行政への首長関与明文化の条例制定」などをおこなっている。今回の事件も、首長の政治介入の延長線上という視点での分析もできるだろう。
(参考)
泉佐野市教委がはだしのゲン回収 「差別的な表現が多い」(共同通信 2014/3/20)
◎「はだしのゲン」回収 泉佐野の市立小中の図書室(朝日新聞 2014/3/20)
◎「なぜゲンだけなのか」 回収協力の校長「悔やんでる」(朝日新聞 2014/3/20)