朝日社説:実教出版教科書排除を批判

 朝日新聞2013年8月24日付社説『教科書選び―教委の介入は要らない』。


 実教出版が発行した高校日本史教科書2種類について、国旗国歌法の記述に関連して「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」という記述があることを一部の教育委員会が敵視し、この教科書の採択意向を表明した学校に圧力をかけて妨害し、採択希望を取り下げさせた事例が明らかになっている。東京都と神奈川県で各学校への採択妨害圧力があったことが報告され、また大阪府でもこの記述は「一面的」とする通知を出している。
 記述を敵視した教育委員会では、起立斉唱の職務命令を出し、「違反した」として言いがかり的に処分される事例が相次いでいる。
 東京都では処分取り消しを求める訴訟がいくつも出されている。裁判では不十分な形ながらも、一部の処分については違法だと認定されている。
 また大阪府では、民間人出身の府立和泉高校校長・中原徹氏(現大阪府教育長)が、卒業式の際に教職員が君が代を斉唱しているかどうか「口元チェック」をおこなっていたことも発覚している。
 神奈川県でも、君が代不起立教員の氏名を教育委員会に報告してリストアップしている問題が浮上している。
 これらの行為は「強制」以外に表現しようがないだろう。
 朝日新聞では、教育委員会は「政治やイデオロギーを持ち込むべきではない」と指摘した上で、3教育委員会の言い分について具体的に以下のように指摘している。

 3教委が問題にしたのは、国旗と国歌について「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と書いた一文だ。東京や大阪などで起立や斉唱の命令に反した教員が処分された。そのことを指している。
 この教科書はもちろん国の検定を通っている。それどころかこの一文は検定を経て修正されたものだ。原文はもっとあいまいな表現だったが、「説明不足でわかりにくい」と検定意見がつき、この表現に直した。
 文部科学省は「校長の職務命令に反すれば懲戒処分になりうるのだから、一定の強制性はある。『強制』は必ずしも誤った表現ではない」としている。常識的な解釈だろう。
 事実を書いた記述であって、よいとか悪いとか価値判断を書いたわけではない。事実に誤りがないかぎり自由な記述を認めるのが検定の原則だ。
 教科書を使う生徒や先生にとっては、大事なのは、古代から現代までの歴史全体が正確に分かりやすく書かれているかどうかだ。この教科書を希望していた学校も、国旗国歌の記述で選んだわけではあるまい。
 この一文だけを目のかたきにして採択の選択肢から排除する教委の方がおかしい。

 今回の問題の論点の大半が簡潔にまとまっていて、事実関係を踏めた極めて常識的な主張だといえる。
 誤った記述ではないこと、事実しか書いていなくて特定の価値判断に踏み込んだものではないこと、教科書検定でより踏み混んだ記述に修正された上で通ったので教育委員会が問題視するのは「二重検定」にあたること、現場の裁量を完全に無視していて教育の自由や自主性に抵触すること、どれをとっても教育委員会の対応には道理がない。