『はだしのゲン』鳥取市立中央図書館でも別置き措置

 鳥取市立中央図書館が2011年から、『はだしのゲン』を事務室内に別置きし、閲覧者が自由に手に取れない状態にしていたことが8月19日までにわかった。毎日新聞ウェブ版2013年8月19日付『はだしのゲン:鳥取市立中央図書館でも事務室に別置き』が報じている。

 記事によると、以下のような経過だという。

 同図書館によると、ゲンは児童書コーナーに置かれていたが、2011年夏にゲンを読んだ小学校低学年の児童の保護者から「強姦(ごうかん)などの性的描写などがあり、小さな子が目にする場所に置くのはどうなのか」とクレームがあった。貸し出しカウンター裏の事務室内に別置きする措置を取り、そのまま放置されていたという。希望があれば、閲覧や貸し出しには応じていた。

 『はだしのゲン』の「性的描写」とされるものは、戦争の悲惨さを訴える描写そのものである。戦争を美化し、戦争の悲惨さを訴えることを「反日」と短絡的に決めつける極右は、その点を敵視してあちこちでクレームをつけている。島根県松江市の教育委員会が『はだしのゲン』を学校図書室から閉架措置にした問題が報じられたばかりだが、松江市でもきっかけは、描写に関する極右からのクレームだった。
 戦争の真実や教訓を後世に伝える取り組みを妨害し、あわよくば事実そのものを抹殺しようとする策動である。今回クレームを付けたものが極右なのかは不明だが、図書館側はクレームの中身に正当性があったのか検討したのだろうか。
 また図書館という観点からも、特定の資料を恣意的に利用者の目に触れさせないようにするのは、図書館運営の基本すら危うくするものとなる。
 団体・組織が、クレームがあったからとして、短絡的にクレーマーの言い分を受け入れて事なかれ的に対応し、不当なクレームには無条件に迎合する。一方で理のある正当なクレームや、不当なクレームへの対応で生じた新たな被害は、指摘した相手を逆に排除したり攻撃する――今の日本ではよくその手のトラブルが起きている。そういうことは一般に、その団体・組織だけでなく、「業界」や社会全体にとっても大きな損失になってしまう。今回の事例はその一例となってしまっている。こんなことでいいのだろうか。