柔道日本代表監督暴力問題、選手は「演技」で従っていただけ

 柔道全日本女子代表チームの園田隆二前監督が指導中に選手に対して暴力や人格否定の暴言を繰り返していた問題。教育問題とは少し異なるが、教育分野でも「体罰」を考える際にあたっての重要な問題が隠されている。


 日本オリンピック委員会(JOC)が3月19日に開催した理事会で、暴力問題に関連して全日本柔道連盟(全柔連)への2013年度交付金を停止することを決めたが、その議題を審議した際、前監督らの暴力の詳細についても詳細に指摘されたという。
 「スポーツ報知」2013年3月20日付『【柔道】園田監督との信頼関係「全部演技だった」』によると、以下のような記事が掲載されている。

 園田隆二前監督(39)は一部選手に複数回の平手打ちをしたほか、練習で棒やむち状のものを振り回して選手を威嚇し「たたかれないと動けないなら、家畜と一緒だ」などと発言したと認めた。プロジェクトメンバーの荒木田裕子理事は「正直びっくりしたし、おぞましい。情けない思いでいっぱい」と語気を強めた。
 聞き取り調査の中で、ある選手は「園田監督を勘違いさせた私たちが悪かった」と衝撃の告白をしたという。ロンドン五輪までの4年間、選手はメッセージカードを渡したり、「園田組」というTシャツを作ったりと、はた目には仲がよさそうに見えたが、「選手が園田さんに気を使って、完璧な信頼関係を作っているかのように演じていた。全部演技だった」とJOCの藤原庸介理事は明かした。
 いつ、何が飛んでくるか分からない。突然、目が据わり、怒りで我を忘れる。「選手は園田監督を心の底から恐れていた」と藤原理事。顔を見るだけで吐き気をもよおす選手もいた。一方、園田監督も吉村和郎前強化委員長も、信頼関係にみじんも疑いをもっていなかったという。

 「体罰」や暴力の加害者や支持者の定番の言い訳のひとつとして、「信頼関係があれば」というのがある。しかしそもそも「体罰」や暴力・暴言・虐待を常用するから信頼関係など全くなくなり、不信感を募らせながらも暴力を恐れて表面だけ従うという「演技」をせざるを得なくなる。「体罰」や暴力で「信頼関係」を作ることなどありえない。
 それは逆に言えば、「体罰」や暴言を加える指導者とは「信頼関係」自体が最初から存在しないのだから、存在しない「信頼関係」を前提として「体罰」を正当化するという論は根本的に成り立たないということにもなる。