暴力問題化した教師、別の学校に拾われる

 SAPIO2013年4月号に『体罰で書類送検され退職の元野球部教諭 別の私立校コーチに』とする記事が掲載された。


 この記事によると、大阪産業大学附属高顧問だった・A教諭が特定の部員に暴行を繰り返し加え、うつ病になって退学に追い込んだとして、加害者となったAが書類送検され、被害者が学校や当該顧問などを訴えた民事訴訟が提訴されている問題に関連して、当該の顧問は2013年に同校を退職し、大阪府内の別の私立高校(B校)の野球部顧問として再就職したと指摘されている。
 この顧問・Aが移ったB校は、近年は成績が振るわないものの、野球部が有名な学校だという。B校の副校長がAと旧知の間柄で、そのつてで2013年1月に野球部の寮監として採用され、2月には教諭と野球部コーチに就任したという。
 Aは寮監着任直後、寮生の部員にげんこつを加えるなどの「体罰」を加えたと指摘されている。この学校での「体罰」発覚の直後、大阪産業大学附属高校の事件が報じられ、B校保護者の間では、Aと大産大高校で問題を起こした顧問が同一人物ではないかと指摘されて問題になったという。
 一方でこの人物が新しく赴任した学校側は、この人物をかばっているのではないかと記事で指摘されている。副校長へのインタビューが掲載されているが、ひどい「体罰」容認の内容である。

「私もうちの校長も元々Aと同じ職場で、Aが非常にしっかりした信頼できる人間だとわかっています。1月にあった件(寮での体罰)は2回確認しています。朝、起きてこなかった生徒の頭をゲンコツでゴツンとやるなどした。Aには注意しますが、生徒はもう一度頑張るので指導してほしいと言っている。保護者も鍛えてほしいと言っています。基本的にはやりませんが、Aぐらいの熱血でないと寮生活指導ができないのも事実だ。
 大産大附属高の生徒は、体罰ではなく部内のいじめで学校を辞めたと確認している。Aは処分を受け、既に終わったことと理解しています。体罰への厳しい論調は橋下徹市長の追及が始まってからでしょう。では聞きますが、法律に何をやってはいけないと具体的に書いていますか? それじゃ現場は困るわけです」

 暴力を「熱血」とすり替えている前半部は、「体罰」容認の典型である。
 後半にいたっては屁理屈としか言いようがない。Aの行為はある意味「部内のいじめ」とも言えるが、この内容だと「生徒間のいじめが原因で、顧問からのいじめ・暴力は関係ない」と責任転嫁を図っていると受け取れる。「Aは処分を受け、既に終わったことと理解しています」というのならなぜ訴訟になるのか。被害者にとっては現在進行形にほかならない。
 「では聞きますが、法律に何をやってはいけないと具体的に書いていますか? それじゃ現場は困るわけです」なる言い分については、ふざけているのかと首をひねりたくなる。
 副校長の言い分については、記事では「法律にははっきりと、「(教員は)体罰を加えることはできない」(学校教育法第11条)とある。文科省通知でも、もちろんゲンコツで殴ることは禁じられている。B高の見解はいずれとも相容れない。」とバッサリと指摘している。当然のことである。
 この問題にかぎらず、特に「強豪校」の運動部顧問の場合、生徒が大ケガや心身症状発症・不登校・退学に追い込まれるほどの激しい「体罰」事件を起こして問題になっても、指導者仲間などのつながりを頼ったり、また運動部を「学校宣伝の目玉にしたい」という経営陣の思惑とも相まって、私立学校や民間スポーツクラブなどの指導者として拾われ、新たな赴任先でも再び暴力事件を起こす例が後を絶たない。
 当サイトが把握している事例でも、以下の様なことがあった。

  • 生徒に激しい暴力を加えたとして停職になった近畿地方の公立高校バレーボール部顧問が、隣県の私立学校に移りそこでも「体罰」が問題になった。
  • 生徒を竹刀で殴り大ケガをさせたとして停職処分を受けた近畿地方の公立高校剣道部顧問が、退職後隣県の私立学校で剣道部顧問をしていたことが確認された。その後当該者は地方議員に転身した。
  • 女子ソフトボール日本代表監督なども務めた人物が勤務先の近畿地方の私立高校で「体罰」問題を起こす。その後硬式野球の指導者に転身し、九州の私立高校に赴任した約10年後再び「体罰」事件が報じられる。当該者はさらに、中国地方の私立高校に移り野球部監督を務めている。

 いわゆる「体罰」と称される行為は、ただの暴力犯罪であり、生徒の心身を深く傷つけるだけで教育効果など全くない虐待であること、このことを社会的に徹底していかなければならない。あらゆる「体罰」容認論とは決別しなければならないし、「体罰」に全く反省なく赴任する先々で問題を繰り返す人物、またそういう人物をありがたがる風潮は、早期に根絶していかなければならない。