高校歴史教科書への攻撃

 2013年度に使用する高校日本史教科書について、学校現場で採択内定した教科書を教育委員会が差し替えさせる問題が東京都と横浜市で発生した。このことについて、子どもと教科書全国ネット21事務局長・俵義文氏が『しんぶん赤旗』2012年10月1日付に手記『高校歴史教科書 新たな攻撃 教委が現場の採択くつがえす』を寄せている。

 この問題は以前にも別のメディアでも断続的に報じられ、当ブログでも過去の報道を受けて似た趣旨の過去エントリをアップしている。しかし、事の重大性と比較してマスコミでの扱いが小さいと感じることもあり、手記を受けて改めて取り上げることにする。
 東京都でも横浜市でも、問題になった教科書は実教出版の新課程用日本史教科書『高校日本史A』である。
 東京都では、「国民に国旗掲揚、国歌斉唱を強制するものではないことを国会審議で明らかにした」「一部の自治体では教員に強制の動きがある」など、日の丸・君が代に関する記述が不適切だとして、都教委が「実教版は都教委の方針と合わない」と校長に繰り返し電話するなどして圧力をかけ、採択を差し替えさせた。この際、「産経新聞」がこの教科書の記述を問題視した新聞記事を根拠にしている。
 また横浜市でも、市立高校4校で実教出版版を採択したところ、市教委の審議会が独断で他社教科書に変更した。「つくる会」系教科書に関する教科書問題や反対する市民運動の動きが記載されていたことが、中学校社会科歴史・公民教科書で侵略戦争や人権軽視などを正当化する「つくる会」系教科書を採択した横浜市にとっては気に入らなかったらしく、「中学校の教科書で学んだ生徒が高校で実教出版版で学ぶと嫌な思いをする可能性がある」などとしている。
 これらの問題について、記事では以下のように指摘している。

 この背景には、右翼勢力・政治家による新たな高校教科書への攻撃がある。文科省の検定公開後、「産経」だけでなく、日本教育再生機構や日本会議、自民党文部科学部会・日本の前途と歴史教育を考える議員の会(「教科書議連」)などが、実教版などの「国旗・国家」、南京大虐殺、日本軍「慰安婦」等の記述に対して、繰り返し不当な攻撃を行っている。
 学校現場が選定した教科書を教育委員会が圧力をかけて変更させたり、勝手に差し替えさせたのは、戦後初めての出来事である。こうした不法・不当なことを許せば、次は他の教育委員会が追随したり、他社や他教科の教科書にも及ぶことになりかねない。教育委員会が気に入らない記述や教材が掲載された教科書は採択されないことになってしまう。

 右派側の攻撃が強まり、教科書採択差し替えという前代未聞の事態まで進んでいることを告発している。
 教科書攻撃は全国規模で進んでいて、このような措置をとる教育委員会が他にも現れる危険性もある。また教科書攻撃は社会科の歴史・公民への攻撃が目立つが、それだけではなく家庭科での家族の描き方・国語教科書に掲載された小説や随筆などの選定・性教育など、極右にとって「サヨク的」とみなした他教科・領域の教材にも幅広く攻撃の矛先を向けている。
 彼らの主張の中身自体は本来なら相手にするのも馬鹿馬鹿しいほど稚拙なものであるが、おかしな主張をする勢力が政治や行政と一体化しているので、放置すると彼らのやりたい放題になりかねない点では極めて危険である。
 攻撃を跳ね返す取り組みを強めていかなければならない。