学校選択制推進する大阪市住吉区長

 毎日新聞(大阪版)2012年8月14日付に『何をしますか?:大阪市・公募区長に聞く 住吉区長・吉田康人さん /大阪』が掲載されている。

 大阪市では24区各行政区ごとに橋下徹大阪市長の意を受けた公募区長が選任され、うち22区では8月1日から就任している。

 記事では吉田康人住吉区長にインタビューしている。吉田区長は大阪府高槻市議を経て高槻市長選に挑戦して落選した経歴を持つ。新自由主義的な政策を掲げていた。また一部報道では統一協会との関係も指摘されている。

 吉田区長が重点的に取り組みたいとしているのが学校選択制の導入。このことについて記事では以下のように触れている。

 意欲を燃やすのが、小中学校選択制の導入だ。今後、区民の意見を聞いて是非を検討するが「住吉区で先行実施してもいい」と意気込む。「選択肢を与え、選んだ責任は本人が負うのが基本。区民には自己責任も求めていきたい」と話す。

 大阪市では各行政区ごとに学校選択制について区民から意見聴取するフォーラムを開催しているが、住吉区は反対の声が強かった区の一つである。

 「選択肢を与え、選んだ責任は本人が負うのが基本。区民には自己責任も求めていきたい」というのは何を意味するのだろうか。

 選択肢を提供するといっても、各選択肢への十分すぎる条件整備は全く保証していないので、すべての選択肢が「当たり」というわけではない。新自由主義的な自由選択ではそもそも、各選択肢の条件整備をサボる口実として自由選択を持ち出す傾向がある。

 条件の良い所には希望者が殺到して、受け入れ枠から漏れるなどして希望通りにいかず、やむを得ず条件の悪いところを選ばざるをえない人も出てくる。しかし条件の悪いところで一度事故に巻き込まれても、「選んだあなたたちが悪い。自己責任」と保護者が責められる――保育事故の問題ではそういう事例が実際にあちこちで発生してしまっている。

 市教委サイドは現行の校区は残して校区内の児童・生徒を優先入学させる前提にしているようだが、橋下徹大阪市長は、現行の小中学校校区を撤廃して完全自由選択制にすることも選択肢に入れているような発言もしている。校区が撤廃された場合、旧校区の学校や自宅最寄りの学校を希望してもかなわず、遠くまで通わされた末に通学途中で事故に遭うなどのケースも考えられるが、そういう場合でも「自己責任」呼ばわりされかねない。

 また児童・生徒間のいじめ、問題教師からの「体罰」・暴力・児童生徒いじめ・虐待、学校事故など、そういった事例に万が一巻き込まれた場合、「自己責任」呼ばわりされて放置され、被害者が抗議して改善を求めるのはクレーマー・モンスターペアレント扱いされることにもなりかねない。いじめやそれに類する行為は、関係者との人間関係の中で発生するので、元も子もない表現になるが「どこに行っても、運が悪ければ被害に遭う可能性は誰にでもある」という性格のものである。

 隣の校区の学校のほうが通学距離が短い地域・大通りなどで校区が分断されていて隣接校区の学校のほうが通学の安全が期待される地域などで、部分的に調整区域を設定してその地域内在住の児童生徒・保護者が選択できるようにすることは、場合によってはありえるだろう。しかしここで想定されている学校選択制は、そういうものとは全く異質のものである。

 学校選択制賛成の意見として時々出される「隣の校区の学校のほうが自宅に近いのでそちらに通わせたい」という問題や、いじめを避けるための緊急避難としての転校の問題などは、現行制度の柔軟な適用で十分に解決可能である。実際、大阪市でも北区・西区・西成区など一部の地域では小中学校校区に調整区域が設定されている場合もある。それをもっと柔軟に活用すれば済むのではないか。