「君が代斉唱妨害」処分取り消し:北海道

 北海道倶知安町立倶知安中学校で、2001年3月の卒業式で君が代斉唱を妨害したとして、北海道教育委員会から訓告処分を受けた男性教諭(49)が処分取り消しを求めていた請求で、北海道人事委員会は処分取り消しを認める採決を出しました。


 この件に関する事実関係については、以下の通りだということです。

◆同中では、卒業式の式次第には国歌斉唱がなく、卒業式の事前練習でも君が代の斉唱を行わなかった。しかし、当日になって、校長が一方的に君が代のカセットテープをレコーダーから流した。このため、教諭はテープを抜き取って斉唱を妨害した。その後、校歌斉唱に移ったが、大きな混乱もなく式は終了した。(『毎日新聞』2006/10/24)
◆教諭は二○○一年三月、後志管内倶知安中の卒業式で、校長席近くに置かれたCDカセットを校長の制止を振り切って持ち去り、君が代の演奏を止めた。同校では、君が代演奏について校長と教職員間の意見が対立したまま校長が実施を最終判断。式次第に「国歌斉唱」の表記はなかった。(『北海道新聞』2006/10/24)
◆教諭は2001年3月、勤務していた倶知安町立中学校の卒業式で、国歌斉唱用のCDカセットデッキを持ち去り、演奏を中止。…(中略)…しかし、当時の校長が職員との間で生じていた君が代斉唱をめぐる対立を解消せず、教職員や生徒に知らせないまま、式次第にもない演奏を実施したのは「手続き上、重大な瑕疵があった」と認定した。(『読売新聞』2006/10/24)

 校長が「君が代」の音源を勝手に持ち込んで勝手に流したため、教諭がそれを実力で止めたという事実経過のようです。
 もともと校長が実力行使に出なければ教諭の行為もなかったわけで、教諭だけ一方的に処分されるべき性質のものではないでしょう。むしろ校長のほうが、生徒や教職員との話し合いを経ずに独断で「君が代」の音源を流そうとしたとして、卒業式の妨害者と見なされてもおかしくありません。
 裁決では学習指導要領の「日の丸・君が代」の条項について法的拘束力を否定し、「教職員に対する式での日の丸・君が代の強制は思想・良心の不当な侵害と解される」としました。また校長が一方的に君が代を流したことについては、「式運営を職務命令だけで決定するのは不適切」「式運営上の重大な瑕疵」「運営について生徒や保護者にも意見表明の機会が与えられるべき」などと結論づけました。
 学習指導要領では、「望ましい集団活動を通して,心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図り,集団や社会の一員としてよりよい生活を築こうとする自主的,実践的な態度を育てるとともに,人間としての生き方についての自覚を深め,自己を生かす能力を養う。」(中学校学習指導要領・特別活動の目標)とされています。
 生徒や教職員の同意なしに、校長の独断で「君が代」を卒業式に押しつけようとしたという卒業式運営は、生徒の自主性・生徒や教職員の思想信条の自由を否定するもので、そもそも学習指導要領に反するものです。
 学習指導要領そのものの法的拘束力についても議論がありますが、特定の立場を一方的に押しつけようとする学習指導要領の「日の丸・君が代」条項は、学習指導要領そのものに法的拘束力があったと考えても、学習指導要領全体の見地や、日本国憲法や国旗・国歌法などのほかの諸法規と矛盾があるものです。
 北海道人事委員会の裁決は極めて常識的な裁決であり、おおむね支持できます。