受験優先の弊害

 富山県立高岡南高校の現3年生のカリキュラムについて、地理歴史科で1科目だけしか履修しない状況になっていたため、3年生全員が卒業要件を満たさない事態になっていたことが分かりました。


 学習指導要領によると、本来の必修要件は以下の(1)(2)の条件の通りです。
(1)世界史A(標準単位数2単位)・世界史B(標準単位数4単位)から1科目が必修。
(2)日本史または地理から1科目が必修。
 地理歴史科では、少なくとも「世界史+日本史」「世界史+地理」の2科目を履修しなければいけません(学校の方針や生徒の希望によっては「世界史+日本史+地理」の3科目すべてを履修することもあります)。
 しかし高岡南高校の現3年生では、1年次に生徒から「受験に必要な科目しか履修したくない」という声が相次ぎ、職員会議での議論・校長の了承を経て、1科目だけの履修にしたということです。
 したがって日本史や地理を選択した生徒は世界史を履修していない、世界史を履修した生徒は日本史または地理も履修しなければいけないのに履修していない、したがって全員が必修要件を満たしていないということになりました。
 この高校では、1年生では地歴科の科目はなく、2~3年次で地歴科を開講しているようです。
 カリキュラムについては、例えば「地理で受験したいのに、選択科目が日本史しか開講されていない」という生徒からの苦情なら、できるだけ生徒の要望に添って検討されるべきです。しかし、世界史を含めて2科目履修しなければいけないところを1科目ですませようということ、すなわち学習指導要領の履修要件に抵触することについては、了承する余地がどこにあるのでしょうか。そもそも職員会議にかける時点で、誰か止めなかったのかという疑問があります。
 また受験に必要な科目しか履修しないのなら、体育も芸術も家庭科もいらないということにもなってしまいかねません。受験に必要な科目だけを開講するのは、高校のすることではありません。「受験に必要な科目しか履修したくない」という生徒の声について説得することも、高校教員の役割ではないかと思います。
 しかも、足りない授業時数分は、あと半年で補わなければなりません。日本史・地理選択生徒については世界史の授業を、世界史選択生徒については日本史または地理の授業を、それぞれ少なくとも2単位分(50分授業換算で約70回)おこなわなければなりません。学校側は冬期講習で補うことを検討しているといいますが、冬期講習の時期はまさに受験直前の時期。受験に必要な配慮をしたつもりが、逆に受験勉強に充てる時間を削ったという皮肉な結果になります。