保護者が不適格教員申し立て検討へ:教育基本条例案

 大阪維新の会が大阪府や大阪市などで制定を目指す教育基本条例案について、大阪維新の会の代表でもある橋下徹大阪市長は1月10日、教職員の相対評価に代えて、保護者が不適格教員を申し立てる制度の検討に入った。

 前日1月9日の毎日放送のニュース番組『VOICE』でインタビューを受けたとき、教育基本条例案の説明では、自己矛盾に陥って一瞬言葉に詰まったことがよほどこたえたのだろうか。

MBS VOICE 2011/1/9放送より インタビューの要旨
大八木友之キャスター「難しいのは教職員の評価の問題。相対評価にするとどんな学校でも(最高評価の)Sの先生、(最低評価の)Dの先生が出てくるわけですね。」
橋下徹大阪市長「大八木さん、相対評価は難しいと言いますけど、学校現場で相対評価が行われているのはご存じですか。子どもの内申書は相対評価でやっているんですよ。子どもたちは入試前に10段階相対評価されて、バカみたいな内申書によって子どもの人生が決められている。教員が子どもたちの評価をしているのなら、なぜ教職員にも導入できないのですか」
大八木「そんなバカみたいな制度を導入するのですか」
橋下「(言葉に詰まり、表情が変わり)…何が?」
大八木「子どもたちを苦しめているんだったら、なぜ先生にも導入するんですか」
橋下「子どもたちの制度がなくなれば(相対評価を)変えていってもいいじゃないですか」

 教職員の相対評価を正当化するために、教職員とは直接関係ない内申書の相対評価を持ち出し、「教職員は生徒に相対評価をしている」とすり替えた。しかし、すぐそのあとに「バカみたいな内申書(の相対評価)」と、正当化しようとしていたはずの相対評価自体を否定するような自己矛盾。
 「バカみたいな相対評価の制度を教職員にも導入するのですか」と聞かれて言葉に詰まりあとはグダグダ。
 インタビューのことはさておき、教育基本条例案の枠組みである限り、相対評価を保護者からの申告制度に代えても、良心的な教員が排除されたり、排除を恐れて萎縮させたりすることには何の変わりもない。
 不適格教員の申し立てといえば一見すると聞こえがよいが、行政が直接手を下さずに、保護者に攻撃を代行させる分だけより悪質なことになる。
 今でも、つくる会教科書を支持したり、日の丸・君が代を強制しようとする一部保護者が、政治的な思惑などから反対派の教師を攻撃するということも発生している。政治的思惑を持った一部保護者がそういった教師を「不適格」と主張してねじ込み、政治的策動で教職そのものから追放させるようにし向けるということも考えられる。
 また、校長がPTA役員など有力な保護者に対し、自分の気に入らない教師の悪口を吹き込んで、保護者を通じて排除させるということも考えられる。
 一方で、暴力(いわゆる「体罰」)常習者、いじめを認識しながら放置したり被害者に筋違いの説教をするなど不適切対応、自らが生徒いじめに加担しているなど、問題のある教師がいることも事実である。問題教師は現行でも、学校や教育委員会に対応を求めることができる。しかし学校や教育委員会は、その手の問題教師をかばって事件をもみ消すということをあちこちでやってきた。
 教育基本条例案では、問題教師がらみの事件もみ消しがなくなるのかといえば、実際は逆になることは自明だろう。学校が数値目標など目に見える目標一辺倒で評価され他校と競争させられる教育基本条例案では、学校にとってマイナスイメージにつながると思われるような事件や事故は積極的に解決されず、逆に隠蔽されることになる。
 しかも教育基本条例案では、「体罰」の実質容認、学校にとって不都合な意見に「モンスターペアレント」のレッテルを貼って排除なども可能となっている。問題教師は今まで以上にかくまわれることになる。
 根本的には、教育基本条例案そのものを白紙撤回しなければどうしようもない。