大阪市住之江区乳児虐待死:担当医師は虐待疑う

 大阪市住之江区の生後3ヶ月男児虐待死事件で、児童を診察した大阪市立住吉市民病院(住之江区)の医師がカルテに虐待の可能性を疑うような内容を記載しながら関係機関への通告をおこなっていなかったことが、大阪市の調査でわかりました。

 児童は1ヶ月検診時の2010年11月4日に腕の骨折が判明し、住吉市民病院で診察を受けました。さらに2010年11月30日には両足の骨折で再び住吉市民病院を受診しました。両親はけがの原因として「飲み会に参加したとき、居合わせた別の子どもに踏まれた」と医師に話したということです。
 11月30日の診察を担当した医師は、けがの原因の所見として「先天的な骨の形成不全」「ホルモンの病気」「虐待」が考えられるという趣旨を記入したといいます。この医師は後日の診察の際、母親(34)に対して児童相談所への相談をすすめたものの、母親は断ったということです。
 またこれとは別に、大阪府警の捜査によると、母親は看護師に対し、「子どもが生まれたことで父親が嫉妬して虐待を加えた」と打ち明けていたことも明らかになっています。
 住吉市民病院や同病院を管轄する大阪市病院局は「(母親を)出産時も担当し、医師とも顔見知りだった。子育てに熱心で、骨折の他に目立った外傷がなかったことから児相に通報しなかった」「今となっては客観的なけがに基づいて判断して、もっと早く児相などに相談すべきだった」と説明しているということです。「当時は可能な対応を取ったが、今の時点で振り返ってみると結果的に不十分だった」ということでしょうか。
 大阪市では、2009年の西淀川区の事件・2010年の西区の事件と大きな児童虐待事件が立て続けに発生し、児童虐待対策の強化が図られてきたところです。このような状況の中、再び悪質な虐待を見逃して重大な結果を招く事件が発生した形になってしまいました。
 また住吉市民病院についても、建て替えにあわせて2016年度にも周産期医療と小児医療の専門病院に改編する構想が、2011年5月11日に打ち出されたばかりです。その矢先に、結果的に虐待を見逃してしまう事案が発覚したことになります。
 刑事事件の捜査と並行して、病院の対応についても詳細に解明し、教訓を導き出していかなければなりません。病院関係者個人の責任を問うことを目的とするのではなく、事件の全容を解明する中で「当時は適切と思っていた行為でも、振り返ってみれば何が足りなかったのか」などの点を明らかにして、今後同種の事案に直面した際により適切な対応をとれるような教訓とするという観点ですすめていく必要があるでしょう。
(参考)
◎カルテに虐待疑い、病院は通報せず 大阪乳児不審死(朝日新聞 2011/5/18)
◎「虐待疑い」カルテに2度、通告なし…乳児死亡(読売新聞 2011/5/18)
◎住之江・乳児死亡 医師がカルテに「虐待の可能性」(毎日放送 2011/5/18)