大学入試での監督状況:朝日新聞が複数の大学教員に取材

 京都大学など4大学の入学試験で試験時間中に、「答えを教えて下さい」とする書き込みとともに入試問題がインターネットの質問サイトに書き込まれた事件は、組織的な不正ではなく1人の受験生が単独で携帯電話を操作して問題を入力し投稿したとされています。

 ネットというツールを利用しているものの、内容としてはカンニングペーパーを盗み見るなどのいわば古典的なカンニングの手口と本質的には同じだったことになります。
 朝日新聞(web版)2011年3月6日付『巡回多いと苦情、不正の瞬間見ないと…悩める試験監督』では、試験監督体制という側面から、関西の他大学で入試の監督業務を担当する大学教員への取材を通じて、問題点を浮き彫りにしようと試みています。
 監督者が不審な動きに気づいても、実際にカンニングの様子を確認しない限り、注意するのも難しい様子です。監督者も「万が一誤りだったら」という心情が働くでしょうし、またただでさえ受験生は緊張しているのに、注意したものの誤りだった場合受験生を動揺させて実力が発揮できなくなる恐れもあります。
 記事では、入試監督の際にある受験生が携帯電話を操作しているような不審な動きに気づきながら現場を確認できなかったとして、結局注意できずじまいだったとする大学教員の声を紹介しています。

 1月の大学入試センター試験の会場となった関西の私立大。90人収容の教室で監督を務めた女性専任講師は、最後列の男子受験生が机の下に両手を入れているのに気づいた。「携帯電話かも」。何かを握って指を動かす動作に見えた。
 声に出して注意すればほかの受験生の迷惑になる。不正の確証もない。ほかの3人の監督とメモを回し合った。「あの子、挙動がおかしくない?」「要注意」
 巡回を装って代わる代わる席に近づいた。そのたびに受験生は背筋をのばし、両手を机の上に出した。机の中やひざの上をのぞき込むまではできず、結局何をしているかは分からなかった。「不正の瞬間を見ない限り、指摘するのはとても難しい」と話す。

 また試験時間の途中でハンカチやティッシュ、膝掛けやカーディガンなどを出す受験生も珍しくないといいます。これらについては、試験時間中に鼻が詰まったり試験会場が寒く感じるようになったなどの事情を考えれば、一概に止めるわけにもいかないでしょう。その一方で不正行為との見分けもつきにくいようです。
 一方で、入学試験でのカンニングを発見した経験のある大学教員は「カンニングをする受験生の様子は周囲の受験生とは明らかに異なり、不審点に気づくことが多い」と指摘しています。また、巡回を多くすると受験生から「気が散る」などと苦情が出ることがあるという声も紹介されています。
 京都大学の事件では、試験官から死角になった席に座っていたことがカンニングの一因となったとも指摘されています。試験官個人の責任を問うという意味ではなく事件の全容を詳細に分析して再発防止策をとるという観点から、試験監督の体制も詳細に解明したうえで、改善点があれば検討していかなければならないでしょう。