森友問題:「だまされた被害者」扱いで責任を籠池氏個人に押しつける安倍首相

 安倍晋三首相は10月11日夜、テレビ番組の党首討論会に出席した。

 森友学園問題で妻の安倍昭恵氏が一時「瑞穂の國記念小學院」(大阪府豊中市、開校断念)の名誉校長を引き受けていた問題について、学園の籠池泰典前理事長にだまされたとする見解を述べた。

 安倍首相は「籠池さん自体が詐欺で逮捕、起訴された。こういう詐欺を働く人物のつくった学校で、妻が名誉校長を引き受けたことは問題があった」と発言した。

 しかしこれは、事件の責任を籠池氏個人だけに押しつけ、安倍首相や昭恵夫人につながる国の責任、また橋下徹・松井一郎の二代の大阪府知事につながる大阪府と大阪府政与党の「大阪維新の会」(日本維新の会)の責任をうやむやにしようと図る、責任逃れの悪質な発言である。

 森友学園問題では、日本会議の思想につながる極右反動的・復古主義的な学校を作りたいという安倍首相や維新など極右派政治家の思惑にとって、籠池氏の存在が都合の良い存在となり、互いに利害関係で一致して進めていったという背景がある。

 2006年に第一次安倍内閣で改定教育基本法が成立し、愛国心教育の強化などが打ち出された。籠池氏は教育基本法の改定を受け、先代理事長の時代から希望はあったものの具体化する機会がなかった小学校設置に踏み出せるチャンスと判断して具体的に動き出した。

 大阪府も籠池氏の要望を受けて私立小学校設置の認可要件を緩和した。大阪府でおこなわれていた「規制緩和」万能論と、与党・維新の会議員の教育統制・復古主義的教育論が背景にあり、それぞれが結びついたものだといわれる。

 2012年2月26日には大阪市で、日本会議系列の「日本教育再生機構」(育鵬社教科書や教育出版小学校道徳教科書の人脈の母体)による教育再生に関するシンポジウムがおこなわれた。パネリストとして、当時1期目の首相を退任して野党の一議員となっていた安倍晋三氏と、松井一郎大阪府知事が並んだ。

 これらの背景があり、大阪府政での不可解な小学校設置認可過程、それを受けた国有地の不明朗取引問題へとつながっていく。

 しかし、小学校用地として売買された国有地は、元々は豊中市が防災公園として購入する予定だったが価格が高すぎて断念した経緯があることや、極右幼稚園として当時から有名だった学校法人の系列小学校であることなどに疑問を持った地元の大阪府豊中市議らが調査をおこなうと、原則全面公開となっている土地の売買価格が非公開となり、開示請求をかけても非開示扱いにされたという不審点があった。朝日新聞の周辺取材により、周辺の相場よりもはるかに安い価格で取引された疑惑が、2017年2月にスクープされた。それ以降一連の森友学園問題が連日報道されるようになり、土地の売買に関わる経過から、それに至るまでの大阪府の不審な動き、政治家やその関係者が多数絡んでいるのではないかという疑惑など、不審点が多数発覚した形になった。

 安倍昭恵氏が名誉校長を引き受けたことについても、籠池氏サイドと安倍昭恵氏が懇意で、また安倍晋三首相の意向も働いているのではないかとされている。

 一方で事件が発覚すると、安倍首相も大阪府・維新サイドも、籠池氏の個人的な暴走化のように話を矮小化させて責任転嫁を図っている。籠池氏にもおかしな点はあり必要な対応が求められるが、あのような事件は、一幼稚園経営者の個人的な判断だけで起こせるようなわけがない。籠池氏個人の問題ではなく、国政や大阪府政を巻き込んだ、有力政治家の存在が黒幕だと考えられる。

 今回の安倍首相の発言についても、責任転嫁と籠池氏個人だけに罪をかぶせることをねらうものだと受け止めざるを得ない。極めて悪質なものではないか。

 森友疑惑については、安倍政権と大阪府での維新の存在、その両方が問われることになる。

(参考)
◎安倍首相、「妻はだまされた」(時事通信 2017/10/11)