日野皓正氏の中学生暴行事件:保坂展人世田谷区長が会見

 ジャズトランペット奏者の日野皓正氏が2017年8月、東京都世田谷区教委主催のコンサートで、ジャズを指導していた中学生に平手打ちを加えた事件に関連して、保坂展人世田谷区長は9月11日の定例記者会見で、「事業は継続する」とした上で、事件については「行き過ぎた指導」とした。

 日野氏に対して「行き過ぎは改めてほしい」と電話で依頼し、日野氏からは「改める」と返事があったことも明らかにした。

 一方で「体罰」にあたるかどうかについては、「一歩手前」とする見解にとどめた。保坂氏の見解は「体罰」容認にあたるのではないかという質問には「それは違う、と明確に申し上げたい」と否定した。

 この事件は2017年8月に起きた。世田谷区教育委員会では中学生向けの体験事業として、区内中学生を対象としたジャズバンド教室を開催している。区教委は日野皓正氏に校長を委嘱し、公募で選ばれた中学生が4月から8月にかけて日野氏ら専門家の指導を受け、8月のコンサートで成果を発表するという。

 コンサートの際に、ある男子生徒のソロパートが長くなりすぎたとして日野氏が注意した際に、日野氏が舞台上の生徒のところに駆け寄って生徒の髪をつかみ暴行を加える事件が起きた。

 保坂氏は記者会見で、このように述べたという。

「平手打ちの動作は確かにあったが、お子さんは避けた。かすったのか、どうかは分からないが、怪我には至らなかった。となれば行き過ぎた指導の、体罰に差し掛かるギリギリ。当たらなかったから良かったというのは結果論であって、行為自体はよくなかったし、やってほしくない」

「体罰イコール暴力事件という図式ではめられるものとは違う。その手前だと捉えている」

(ハフィントンポスト日本版2017年9月11日『「ギリギリ体罰ではない」保坂展人・世田谷区長、 日野皓正さんの“往復ビンタ”で見解』)

 なんとも煮え切らない見解である。

 保坂氏は教育ジャーナリスト出身でもある。教育ジャーナリストとして、また区長就任後も、ニュースなどで報じられるような「体罰」問題や管理教育問題などの子どもの人権が脅かされる問題では厳しく批判してきた経緯からも、今回の区長としての見解には余計に違和感を感じざるを得ない。

 日野氏の行為は、明らかな「体罰」であり、人権侵害行為である。こういった行為を擁護する風潮などについては、徹底的に打ち消していくような取り組みも必要になってくる。

 取材などによると、日野氏本人の認識は「指導。(生徒とは)親子のようなもの」にとどまっている上に、被害者側も日野氏の行為を是としているという、しかし当事者の認識と、「体罰」という行為の問題性とは別個の問題である。日野氏や被害者個人がどうこうという次元の話というよりも、このような「指導」は社会的に許されないという風潮を作っていくことが重要ではないか。

 また「体罰」の問題は、事業の継続の問題とは切り離した別個の問題として、独自に取り組むべきものである。事業を守るという口実で「体罰」や不適切行為をもみ消すでは、子どもの人権にとってはふさわしくない状況を放置することにもなる。事業は事業としてそれなりのふさわしい結論を出せばよいが、だからといって「体罰」を認めるというわけにはいかない。