産経新聞:教育出版道徳教科書の問題点を正当化する記事

 2017年8月までに採択され、2018年度から使用される予定の小学校道徳教科書について、「産経新聞」2017年9月8日付が『「教育出版」小学校道徳教科書 首相の写真掲載問題視』とする記事を出した。

 2015年中学校教科書採択で「学び舎」教科書を採択した学校に対して、不採択を求める組織的な動きがあったと報道されたことへの対抗記事だと思われる。しかし記事の内容は、揚げ足取りのたぐいではないかといえる。

 「産経新聞」では、各地で教育出版教科書不採択を求める運動があり、「特定の政治思想をもつ複数の団体が組織的に運動を展開しているともみられ」ると論難したうえで、こう論じている。

 同教科書は、「育鵬社」の中学歴史・公民教科書の編集や採択を支援する民間団体「日本教育再生機構」の元理事が監修者に名を連ねている。

 このため「育鵬社系」「来年の中学道徳教科書に育鵬社が参入予定」などとするレッテル貼りが行われているという。

(中略)

 一方、再生機構の八木秀次理事長は「教育出版を支援した事実はない」と関係を否定。育鵬社も道徳教科書に参入しておらず、教育出版本とは無関係だ。

 これには、論理のすり替えがある。

 「育鵬社も道徳教科書に参入しておらず」は、現時点では事実である。しかし、育鵬社は2013年、小学生向けの道徳副読本「はじめての道徳教科書」を作成・発行している。またそれに先立つ2012年には、中学生向け道徳副読本「13歳からの道徳教科書」を発行している。いずれの書籍も、道徳が教科化されることを見越して、道徳教科書の試行版として企画され、市販本としての販売とともに学校での副教材としての使用も想定する形で作成されたものである。

 教育出版の道徳教科書は、これらの育鵬社発行副読本の編集趣旨を踏まえて内容を発展させ、日本教育再生機構の考え方を反映させる形で作成されたと指摘されている。育鵬社副読本と教育出版道徳教科書の執筆陣は一部重なっているという。

 教育出版道徳教科書の監修者である貝塚茂樹氏(武蔵野大学教授)・柳沼亮太氏(岐阜大学大学院准教授)と、日本教育再生機構の八木秀次理事長が、日本教育再生機構の雑誌「教育再生」67号(2013年12月号)で、道徳教育に関する対談をおこなっていることも指摘されている。

12月6日(金)に、広報誌『教育再生』12月号を発刊しました!  今回は、『はじめての道徳教科書』の刊行に合わせて、貝塚茂樹氏と柳沼良太氏の対談を〈特別インタビュー〉として掲載しています。 貝塚氏は、道徳「教科化」の報告をまとめた、…

一般財団法人日本教育再生機構さんの投稿 2013年12月8日

改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会(代表世話人・屋山太郎)

 「来年の中学道徳教科書に育鵬社が参入予定」という情報についてはあちこちで指摘されているが、当ブログとしては現時点では確定的な情報は持っていない。とはいえども、数年前に道徳副読本を作成した経緯・また「道徳教育からの撤退」を宣言しているわけではないという経緯からは、育鵬社として発行するか、日本教育再生機構系列の執筆陣が他社から発行するかという具体的手法は別としても、道徳教科書への参入を図っていると見なすべきものであろう。

 教育出版の道徳教科書では、5年生用教科書「下町ボブスレー」で安倍晋三首相の写真が使用されているという批判が出ている。「産経新聞」では、教育出版関係者の談話として「国産ボブスレーが誕生した喜びを象徴しており、国による中小企業支援の一つの到達点として国を代表する人が写っている場面を選んだ」と正当化を図っている。しかし問題の教科書の本文を読んでみれば、安倍首相の写真は本文の脈絡とは関係なく唐突に出てきたという違和感を感じるものだった。その場面で写真を使用する必然性をうかがわせる事情がないのに、必要もない文脈で現役政治家の写真を安易に使うこと自体が、政治的中立との兼ね合いで問題になってくる。

 また「産経新聞」の記事では触れられていないが、教育出版の教科書は、2年生用の教材でオリンピックについて「国旗を掲げ国歌を斉唱する」とする記述があるが不正確(正確には選手団の旗と歌)という問題や、低学年用の教材では戦前の修身的なお辞儀を指示するなどの問題も指摘され、「異質な内容」といわれている。これらの点からも問題ではないか。