教育出版の小学校道徳教科書:異質さとその背景

 教育出版の小学校道徳教科書については「異質な内容」と指摘され、採択が警戒されている。

 教材の文章には直接関係ない形で安倍晋三首相の写真が掲載されているほか、教材を貫く内容についても執筆陣の意向を受け、復古主義的・国家主義的な内容となっている。

 小学校1年・2年の教材で「正しいあいさつのしかた」として、「どれが正しいおじぎのしかたか」など戦前の修身教育そっくりのお辞儀をさせるなど、子どもへの強制・強要の傾向も目立っている。

日本教育再生機構の主張を反映した極右的・復古主義的傾向

 教育出版の道徳教科書執筆陣は、日本教育再生機構・日本会議につながる人脈となっている。これは、育鵬社の中学校社会科歴史的分野・公民的分野の教科書の執筆陣と、母体を同じくしていることになる。

 教育出版の小学校道徳教科書の監修者は、貝塚茂樹氏(武蔵野大学教授)と柳沼亮太氏(岐阜大学大学院准教授)である。貝塚氏や柳沼氏は、日本教育再生機構が育鵬社から出版したパイロット版道徳教科書の編集にも関わるなど、日本教育再生機構系列の極右的・復古的な道徳教育の中心となっている人物である。日本教育再生機構の雑誌では、貝塚・柳沼の両氏と、日本教育再生機構の八木秀次理事長が、道徳教育について対談をおこなっている。

東京都武蔵村山市の状況

 8月18日には東京都武蔵村山市で、道徳教科書の採択がおこなわれる予定となっている。この武蔵村山市については、教育出版の執筆陣の影響を強く受けている実状があり、かなり厄介なことになっている。

 武蔵村山市では、前述の貝塚氏が道徳教育の指導・監修に入る形で「徳育科」を設置して、「しつけ」や「礼法」の指導をおこなっている。この内容が教育出版の教科書にも反映されているという。また武蔵村山市の同じ小学校に勤務する教員3人(校長と主任教諭2人)が、教育出版教科書の著者となっている。同一校に勤務する複数の教員が同時に教科書の著者になる事例は、かなり異例だとされる。

 持田浩志・武蔵村山市教育長の経歴についても、すさまじい内容が指摘されている。こちらは5年前の2012年に記された文章である。

 同氏については、かつて国立市教育委員会の学校指導課長として勤務していた当時、石井昌浩教育長(当時。現在は日本教育再生機構にも関与し「教育評論家」の肩書きで、教育問題について産経新聞に極右的な内容を寄稿することもある)とともに、学校現場での日の丸・君が代の強制の中心となったと指摘されている。

 持田氏が国立市教委勤務当時の2000年3月、国立市立小学校の卒業式で、校舎屋上への日の丸掲揚について児童が質問したが、産経新聞が「教員らが児童を扇動し、児童が校長に土下座させようとした」と事実経過を歪曲・捏造して報じ、右翼街宣車が学校前に乗り付けることなども含めた異常な「抗議」が起きた事件があった。その際に持田氏は石井氏とともに、学校現場への介入と日の丸・君が代強制、教職員へ難癖をつけての処分などを図るなどした。

 その後持田氏は、東京都教育庁指導主事や文京区立小学校校長などを歴任し、そこでも日の丸・君が代の強制の推進に携わった。

 持田氏は2007年に武蔵村山市教育長に就任した。武蔵村山市ではそれ以前から都教委との関係・影響が強く、新自由主義的な「教育改革」がおこなわれてきた。持田氏の就任により、従来の新自由主義的な内容に加えて、新保守主義・極右主義・復古主義的な「教育改革」も加わったと指摘されている。

 武蔵村山市では、2011年・15年の中学校教科書採択では、育鵬社の社会科教科書が採択されている。また前述のように、教育出版執筆陣とつながっての道徳教育が進められている。さらに2016年には、同市内のある中学校の行事で、横田基地の米兵を招いてのミニ・ブート・キャンプ(新兵訓練)の模擬体験をおこなっていたことが新聞報道された。

 米空軍横田基地(東京都)に所属する米兵が東京都武蔵村山市立中学校の行事に出向き、「新兵訓練(ブート・キャンプ)」と称したイベントに生徒を参...

 この地域で風穴を開けられれば、東京都だけでなく全国に影響が波及するといえる。

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