2015年中学校教科書採択:特定教科書採択した学校に極右勢力が組織的抗議

 毎日放送が2017年7月30日深夜、同社のドキュメンタリー番組「映像’17」の中で「教育と愛国~教科書でいま何が起きているのか」と題した特集を、関西ローカルで放送するという。

 放送に先立ち、「日刊スポーツ」2017年7月28日付(ウェブ版)が『教科書検定制度にも「忖度」政治的圧力あえぐ教科書』と題して、放送内容のダイジェスト予告的な内容と、制作関係者に取材した記事を掲載している。

鋭い視点で斬り込むMBSテレビのドキュメンタリーシリーズ「映像17」。今回は「教育と愛国~教科書でいま何が起きているのか」と題したドキュメンタリーを30日深& - 日刊スポーツ新聞社のニュースサイト、ニッカンスポーツ・コム(nikkansports.com)

 同局が教育と政治との関係を取材していくうちに、2015年度の中学校教科書採択に際して、森友学園の籠池泰典前理事長や地方都市の首長らが、「ある歴史教科書」を採択した中学校に対して、「反日極左の教科書を採択する目的は何か」「採用を即刻中止することを望む」などという趣旨の抗議文を送付していたことを把握したとしている。籠池氏は自らの実名を記載した上で自筆のはがきで送付し、また当該の学校には首長らによる実名の文書や匿名の文書も含めて、同様の趣旨が記載された文書が大量に届いたという。

 番組では送り主の一人、松浦正人・山口県防府市長へのインタビューもおこなったという。松浦氏は安倍晋三首相に近い「教育再生首長会議」の会長を務め、防府市では育鵬社教科書が採択されている。

 松浦氏は抗議文書を送った理由について「正しい教科書を出さなければいけませんよ、という声を発信」「20~30通は出した」「当該の教科書は偏っている」などとし、また圧力と受け取られるなら仕方がないという見解も述べているという。

 標的にされた教科書を採択した学校は複数校あるが、別の複数の学校に取材すると、いずれの学校でも籠池氏や松浦氏が出した内容とほぼ同じ内容の抗議文が多数届いていたという。抗議は組織的な動きだと思われる。

 番組では教科書検定制度の背景についても掘り起こしているという。担当ディレクターによると、取材の結果「教科書検定から採択に至る動きに、政治的組織的な動きがある」「教育現場も萎縮し、政治的な圧力に教科書があえいでいるように感じた」としている。

 標的にされた教科書は記事では実名が出されていないが、「学び舎」が発行した中学校歴史教科書であることは、予備知識があれば明らかである。

 育鵬社教科書を支持する日本教育再生機構勢力は2015年教科書採択の審議当時、育鵬社・自由社以外の教科書を非難するキャンペーンを強化していた。とりわけ、学び舎を名指しして激しく非難し、学び舎教科書への組織的な「抗議」「放逐」を呼びかける動きも見せていた。その当時の状況とも一致することになる。

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 教科書をめぐっては、安倍内閣のもとで政府見解に基づいた記述を書くよう求める傾向が強まったこと、教科書採択の際には右派勢力からの圧力行為が激しくみられることなど、政治的な介入が強まっている傾向がみられる。これから放送されることになる番組でも、おそらくこのあたりの背景を掘り下げて追及しているのではないかと思われる。