「窓から飛び降りろ」事件で嘆願署名と報道、被害者貶める真偽不明の内容も流布:埼玉

 埼玉県所沢市立山口小学校で、男性教諭が担任クラスの4年の男子児童に「窓から飛び降りろ」などと発言した問題で、学校の保護者から教諭を処分しないよう求める署名運動が起きていると、一部新聞で報じられている。

 この事件の個別の経過については、当ブログとしては、報道で報じられた内容以上の情報は入手できていないことをあらかじめ断っておく。

担任教諭が児童に「窓から飛び降りろ」、日常的に当該児童へのいじめ・暴力か:埼玉・所沢の小学校
 埼玉県所沢市立山口小学校で4年生を担任している男性教諭(40代)が、担任クラスの男子児童に対して「窓から飛び降りろ」などの暴言を吐いていた...

 しかし、こういう教育系のブログを運営していると、過去に似たような事例をいくつも取り上げた経験から、嫌な予感しかしない。

 いわゆる「体罰」事件など教師による暴力や暴言、またいじめ事件などでは、被害者を貶めるような形で加害者を擁護し、被害者に二次被害を与えるような事例は、しばしば見られる。

 この事件に関しても、ネット上では、被害児童や保護者に問題があるかのように貶める真偽不明の情報がかなり強く、またしつこく流されている。

 被害者を貶めるような怪情報がかなり強い調子で流されているのを見ると、過去に起きた「体罰」事件やいじめ事件などで、ひどい被害者中傷がおこなわれた事例をいくつも思い出す。いずれも加害者周辺から流されたデマのひどさ・しつこさに比例するかのように、加害者の行為は報道された内容以上にすさまじいものだった。

 1995年7月に福岡県の私立高校で、教師が生徒を殴り死亡させた「体罰」致死事件。この事件では逮捕された加害者教師への減刑嘆願署名が集められたが、被害者の生徒が「シンナー常習や入れ墨のどうしようもない不良生徒」などとする事実無根のデマとともに集められていた。また被害者の自宅や関係先にも嫌がらせの電話や手紙が続いた。この事件では、ジャーナリストの追跡取材で、デマの出所は加害者教師に近い筋だと突き止められた。

近畿大学附属女子高校「体罰死」事件
福岡県飯塚市の私立近畿大学附属女子高校(現在は近畿大学附属福岡高校)で1995年、商業科担当の男性教諭が女子生徒を殴り死亡させた事件。加害教...
1998年に発表した拙著「暴力の学校 倒錯の街 ―福岡近畿大付属女子高校殺人事件―」の内容を連載します。

 2003年には福岡市の小学校で、教師が担任クラスの特定の児童に対し、暴言を吐く・ランドセルをゴミ箱に捨てるなど執拗ないじめを加え精神症状を発症させた事件が起きた。この事件も舞台は4年生のクラスで、しかも加害者教師は「窓から飛び降りろ」と強要した共通点もある。この事件では、加害者と組んだジャーナリストが事件を「モンスターペアレントのでっちあげ」として被害者親子を中傷する書籍を出した。しかも書籍は1度限りのものではなく、裁判でいじめや暴力の事実が明確に認定された判決が確定してもなお「裁判では被害者の言い分はほとんど退けられた」とねじ曲げて中傷を蒸し返し、嘘の内容を蒸し返した書籍の再販や「続編的な内容」とした雑誌への寄稿を続けている。

福岡市立小学校教諭人種差別的児童いじめ事件
福岡市西区の公立小学校で2003年、4年生を担任していた教諭・林田真二が担任クラスで、ある特定の児童が外国にルーツを持つことを知り、人種差別...

 2005年に発生した長野県の高校でのいじめ自殺事件。この事件では加害者側は一度はいじめを認めながら、後で「被害者の母親が異常」かのように中傷し、加害者を含むバレーボール部員と顧問が共同で「いじめをでっちあげられて部活を妨害された。自殺した生徒を生前に殴った件で警察の取り調べを受けて精神的苦痛を受けた」などとして母親を逆提訴するなどの異常事態となった。さらに前述の福岡市の小学校の事件で書籍を出したのと同じジャーナリストが、この事件でも加害者側の言い分に沿って「事件はでっちあげ」とする書籍を出し中傷を加えた。

丸子実業高校いじめ自殺事件
長野県丸子実業高校(現・丸子修学館高校)1年の生徒が2005年に自殺し、所属していたバレーボール部でのいじめが指摘された事件。いじめ加害者と...

 埼玉県行田市立小学校で2014年、児童へのいじめ同然の不適切な指導をおこなったとして保護者から苦情を受けた担任教諭が、苦情に逆恨みして当該児童へのいじめをエスカレートさせた上、当該児童の保護者を「モンスターペアレント」呼ばわりし、「事実無根の執拗な言いがかりに基づく抗議で精神的苦痛を受けた」と恫喝訴訟を起こした事件では、校長などが教諭の言い分に沿い、当該保護者を「モンスターペアレント」呼ばわりするような文書を出した。

埼玉県行田市・いじめ教師の逆恨み「モンスターペアレント」訴訟
埼玉県行田市立小学校の教諭が児童に不適切指導をおこなって保護者から抗議を受けると、逆恨みで児童へのいじめ行為を繰り返した上、児童の保護者を「...

 他にもいくつもの事件を思い浮かべるが、例示していてはきりがないのでこの辺にとどめる。

 加害者を支持する保護者らがひどい自己正当化を図り被害者側を中傷しながら騒ぐ事件に共通するのは、一定の共通項がみられる。事件そのものについては加害者の行為は問題視されるいわれはない、被害者が被害を訴えて「騒ぐ」のが悪いなどと、加害者の責任を小さく扱う。その代わりに、被害者とマスコミが結託して学校や加害者を攻撃していることが問題かのように斜め上のすり替えをおこなう。おかしな輩からの標的にされた教師は被害者、教師批判は学校や地域への攻撃などと、事実関係をねじ曲げて感情的に描く。そして「被害者側が悪い」と持って行くためには手段を選ばないとばかりに、被害者やその家族について「本人はどうしようもない不良」「保護者はモンスターペアレント」など、被害者のありもしない非をでっちあげて、嘘や捏造を平気ででっちあげるようなデマを流しても意に介さないし、デマを聴いた者は被害者側に関する悪い噂に関して何の裏付けも疑問ももたずに事実扱いで無批判に流す。

 しかしいくら「問題視されるいわれはない」などと強弁したところで、世間一般では問題行為であることには変わりがない。また無理筋の擁護をすることで、加害者の正当性を強調するために、被害者やその関係者を貶める方向がエスカレートしていくことになる。

 この事件でも、被害者の児童や保護者が、ネットだけではなく身の回りでも理不尽な攻撃・中傷を受けているのではないかと心配になる。

スポンサードリンク