「内心の自由」説明で処分:問題の背景を掘り下げる

 東京都立農芸高校定時制の社会科教員が卒業式の予行練習の際、「『君が代』を歌いたい人は歌い、歌いたくない人は自分の思想・信条に従って判断して結構です」と憲法の「内心の自由」を説明したとして、東京都教委は6月9日、この教諭らを厳重注意処分にしました。
 この問題については先日も当ブログで取り上げました〔当ブログ2006/6/10〕が、この問題の背景についてさらに突っ込んで調べている新聞記事〔「しんぶん赤旗」2006/6/26〕が出たことを受けて、改めて取り上げたいと思います。


 東京都が処分を強行したことについて、学習指導要領を根拠にしています。しかし、学習指導要領では何が書かれているのでしょうか。
 「内心の自由」について説明した教員は、「卒業式など特別活動の目標は、『自主的、実践的な態度を育てるとともに、人間としての在り方生き方についての自覚を深め、自己を生かす能力を養う』と学習指導要領にあります。私の説明は、これにも基づいたものです」と語っているということです。確かに、高等学校学習指導要領の特別活動の目標として、そのような文言が明記されています。
 一方で学習指導要領には「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」という文言もあります。東京都教委が根拠としているのは、これではないかと考えられます。
 しかし、国旗・国歌法の国会審議の際には「起立する自由もあれば、また起立しない自由もあろうと思う。斉唱する自由もあれば斉唱しない自由もあろうかと思う」という政府見解(1999年・野中広務官房長官の答弁)が表明されています。すなわち、「日の丸・君が代を強制してはいけない」というのが政府見解なのです。
 また「内心の自由」について説明することは、学習指導要領の内容に反する行為ではありません。むしろ学習指導要領にも沿っている行為だといえます。
 「各学校においては,法令及びこの章以下に示すところに従い(高等学校学習指導要領総則)」、すなわち憲法や諸法規に基づいて学校教育がおこなわれると明記されています。また、社会科(地理歴史・公民)でも、日本国憲法の内容を取り上げることは教育の目標に沿っているとされています。
 仮に「学習指導要領に基づく」とする東京都教委の主張に沿って考えたとしても、東京都教委の主張は、「内心の自由」を無視して一方的に「日の丸・君が代」を強要するという点で、憲法第98条(最高法規)・第99条(公務員の憲法擁護尊重義務)との間に大きな矛盾が生じます。
 これらのことを総合的に勘案すると、憲法の「内心の自由」について説明することは適正な指導で、「入学式・卒業式で、日の丸・君が代を一方的に押しつけて、従わない教師を処分する」という東京都教委のやり方は違憲・違法の疑いが濃いといえます。
 今回の「厳重注意」処分をはじめ、入学式・卒業式での「日の丸・君が代」にからんだ教職員の処分については、すべての処分について撤回を強く求めます。