学校事故と国家賠償法

 大分県立竹田高校の熱射病死亡事件の民事訴訟では4月22日に第1回口頭弁論が開かれましたが、被告となった顧問教諭・副顧問教諭は「国家賠償法により、個人は責任を負わない」などとして請求棄却を求めたそうです。

 国家賠償法では確かに、公務員の公務中の行為については、個人責任は負わないとしています。条文上ではおそらく、上層部の方針に従った結果発生した損害や、不慮の事故などを想定していると思われます。

 学校関連の事故では確かに、指導者個人に責任を負わせるのは適切でないと思われるような事例も多数あります。体育や理科実験などの実技・実習授業中の事故や、校舎からの転落事故などは、個人に責任を帰するよりも学校全体・教育界全体の問題としてとらえ、被害者へ誠実な対応を取るとともに再発防止策を徹底すべき性質のものでしょう。

 一方で、故意もしくは「限りなく故意に近い」とみなしても差し支えないような重大過失による事件・事故も発生していることも事実です。

 いわゆる「体罰」などの教師の暴行、教師の児童・生徒いじめ行為、わいせつ行為、いじめ訴えを把握しながら放置、事故発生の際に素人から見ても無謀な対応をすることにより事故結果を悪化させることなどの事例は、国家賠償法を盾に個人の責任を逃れるような形になるのは不適切ではないかといえます。

 竹田高校事件では、剣道場の室温が36度に達していたのに休憩させなかったこと、水分も補給させずに練習を続けさせたこと、被害生徒が体調不良の兆候を見せたにもかかわらず「気合いが入っていない」などとして暴力を加えたことなどが指摘されています。これは明らかに、熱中症を誘発し、発症した場合は症状を悪化させるものです。

 こんなことは素人でも危ないとわかるはずです。限りなく故意に近いといっても差し支えないような、重大な過失ではないでしょうか。

 国家賠償法を逆手に取り、故意もしくは故意に準じる不法行為について、不法行為をおこなってもいわば逃げ通せるような形になるというのも、おかしな話です。行政当局から加害者個人への求償は可能とはなっていますが、それは行政側の自主判断によるものとなり、行政が求償する例はきわめて少ないということです。

 現行の判例では「個人の賠償責任は棄却する」というのが通例になっていますが、明らかな故意やそれに準じる重大過失については、個人の賠償責任も明確に問えるような運用にはできないのでしょうか。