図書館民営化推進の静岡市:諮問機関が慎重論

 静岡市では、市立図書館に指定管理者制度(民営化)を導入する動きがあるということです。その一方で市立図書館長の諮問機関は「直営を含め時間をかけた検討が必要」として、民営化に慎重な答申を出しました。〔『毎日新聞』2006/6/14


 公共施設の運営を民間委託する指定管理者制度は、2003年から可能になったということです。図書館も指定管理者制度の対象となり、法制度上は民営化も可能になっていますが、民営化が実施されたところでは何が起こっているのか、『毎日新聞』の別の記事「記者の目:民営化が進む図書館=賀川智子(静岡支局)(2006/6/7)」で詳しくレポートされています。

記者の目:民営化が進む図書館=賀川智子(静岡支局)〔『毎日新聞』2006/6/7〕
…だが、民営化された図書館では何が起きているか。北九州市では5館が民間委託され、年間5900万円の経費が浮いた。しかし、利用者からは「以前あった初版本が廃棄された」「地域関連の専門書が減った」といった声が相次いだ。
 04年に全国初の民営化図書館となった山梨県山中湖村の「山中湖情報創造館」では、NPO職員7人の平均年収は180万円。館長は無給。生活費が足りず、ファミリーレストランでアルバイトする人もいる。
 東京都江東区の男性(51)は4年前にカウンター業務が民間委託された図書館を利用する。無愛想だった職員の対応は若い女性の笑顔に変わったが、資料を問い合わせると奧の部屋に引っ込んだままになってしまう。「岩波新書を知らない職員もおり、知人が嘆いていた」とも話した。
 指定管理者となった企業さえ、今の制度には疑問を持つ。図書館流通センター(東京都文京区)の石井昭会長は「図書館法に無料貸し出しの原則があるため創意工夫の範囲は限られ、入館者が増えれば赤字になる。全くうまみのない事業」という。喜んでいるのは支出が削減できた自治体と、「改革」の例が増えた小泉政権だけなのだ。〔以下略〕

 利用者にとっては「本がなくなった」「資料を問い合わせても要領を得ない」などというサービス低下への不満、指定管理者にとっても「生活困難」「うまみのない事業」という問題…果たして誰が得をするというのでしょうか。
 市民が無償で、情報や知識を得ることができるというのは、確かに目先の採算にはなじまないものでしょう。しかし、多くの情報や知識に触れることで、市民一人一人が自ら考え行動する指針となり、ひいては民主主義社会の発展にもつながっていくといえます。その意味では、多くの情報や知識を無料で得られる場所である図書館の存在は、社会的に大きな意義を持ちます。
 私自身も、自費では買えないような出版物(専門書・過去の新聞記事のバックナンバーなど)で調べものをする際には、図書館によく世話になっています。個人的にも、図書館のサービスが低下することは望みません。
 民営化でサービス低下になってしまうのなら、無理に民営化する必要はないのではないかと考えられます。「民間にできることは民間に」というのが民営化推進論者の主張ですが、何でもかんでも民営化すればよいというものではなく、「民営化が本当に住民にとって役立つのか」という点を個別の問題ごとに慎重に吟味していく対応が求められているのではないかと思います。