「日本教科書」、日本教育再生機構の八木秀次氏らが設立:中学校道徳教科書

 3月27日に検定結果が発表された2017年度教科書検定。この検定では、2019年度より「特別の教科」になる中学校の道徳教科書と、高校の主に3年で開講される科目の教科書(コミュニケーション英語3、数学3、芸術3など)が対象になっている。

 今回の検定では、新規に設立された教科書会社「日本教科書」が初参入し、中学校道徳教科書の検定申請をおこない合格している。

 「日本教科書」の背景について、朝日新聞2018年3月28日付が記事『安倍首相ブレーン助言の道徳教科書も合格 八木秀次教授』を配信している。

教科書会社「日本教科書」とは?

 記事では「日本教科書」について、「安倍晋三首相の政策ブレーンとして知られる八木秀次・麗沢大教授らが2016年4月に設立した「道徳専門の教科書会社」」と紹介している。

 また、以下のようにも指摘している。

 道徳の教科化などを提言した、政府の教育再生実行会議の有識者委員を務める八木氏によると、道徳の教科書作成は以前に他の会社と計画していたが、途中で頓挫したため、賛同者から出資を募って会社を設立した。いったんは社長に就いたが、「(1人以上の役員が)出版に関する相当の経験を有する」という教科書会社に求められる要件に合わないとして、昨年に退任した。

日本教育再生機構との関係は?

 「日本教科書」は2018年時点では、ヘイト本とされるよう内容の書籍を多数発行している出版社「晋遊舎」と同じ場所に所在し、「日本教科書」と「晋遊舎」の役員は同一人物が兼任している。

 しかし設立当時、日本教育再生機構と同じ住所に設置されていたことが指摘されていた。指摘の時点では、あくまでも設置当初の住所が日本教育再生機構と同じという状況証拠だけで、日本教育再生機構との関係については不明だった。

 道徳専門の教科書会社と称して、道徳教科書への参入をほのめかしている「日本教科書株式会社」なる会社のウェブサイトの存在が指摘されている。 ...

 朝日新聞の記事によって、日本教育再生機構との関係が浮かび上がったことになる。

 朝日新聞の記事には「日本教育再生機構」の文字は出てこないが、八木氏は日本教育再生機構理事長でもある。

 日本教育再生機構は、社会科の歴史的分野および公民的分野では育鵬社教科書執筆陣の母体となっていると指摘されている。

 森友学園問題の大きな転機となった一つともいわれている、「日本教育再生機構・大阪」が2012年2月26日に大阪市内で開催したシンポジウム。安倍晋三(現首相)・松井一郎(大阪府知事)の両氏と並んでパネリストを務めていたのが、この八木秀次氏である。このシンポジウムを機に、安倍氏サイドと大阪維新・大阪府政が「教育再生」で意気投合し、教育勅語賛美などの特異な教育思想を背景にして、一連の森友学園問題が進んでいくきっかけの一つともなったとされている。

 日本教育再生機構の中心人物でもある八木秀次氏が「日本教科書」設立に関与し、また八木氏自身は経営から一線を引いているとはいえども教科書会社が極右ヘイト本出版社と同調しているということは、「日本教科書」の編集方針にも日本教育再生機構の考え方が色濃く反映しているのではないかと思われる。

他の会社で頓挫した?

 記事では「道徳の教科書作成は以前に他の会社と計画していたが、途中で頓挫した」とある。これは、具体的には何を指しているのかという疑問が生じる。

 「他の会社」の名前は具体的に明記されていないが、周りの状況からは、育鵬社と教育出版の2社の可能性があるのではないかとも推測される。

 育鵬社は、日本教育再生機構系の人脈の考え方を色濃く反映させた、中学生向けの道徳市販本を発行したことがある。この市販本については、学校での道徳副教材としても使用できるよう企図していたともされ、道徳教科化の際の教科書参入の準備という見方もされていた。

 さらに2018年度より教科化される小学校道徳では、日本教育再生機構や前述の育鵬社市販本の執筆陣にもつながる執筆陣は、教育出版から小学校道徳教科書を発行した。2017年夏(2018年度より使用)の小学校道徳教科書採択では、教育出版教科書の内容が問題になった。

 道徳教科書を発行するにしても、この2社から教科書を発行すれば「手っ取り早い」ようには見える。しかしその2社とは別に「日本教科書」を設立しているということになる。この背景について、何があったのだろうか。

教科書採択に向けて

 2018年夏には教科書採択の手続が、各教育委員会で実施される。

 日本教科書の内容については現時点での情報では不明な部分も多い。断片的に伝えられるものや周辺状況を見る限り、日本教育再生機構などの影響を受けた「よろしくないもの」になっている可能性が高いと見受けられる。

 現時点の情報ではまだ不確定な部分も多いが、今後の情報に要注意だといえるのではないか。