通知表「愛国心」表現規制せず

 教育基本法「改正」の審議にからんで、小坂憲次文科相は6月5日、通知表に「愛国心」に関する表現があっても規制しない考えを示したということです。

通知表の表現は規制せず 「愛国心」評価で文科相〔『共同通信』2006/6/5〕
 小坂憲次文部科学相は5日の衆院教育基本法特別委員会で、埼玉県行田市の小学校の通知表の評価項目に「自国を愛し」などの表記があることについて「通知表の表現は学校長に委ねられている。表現を個別に審査し、認可するなどの規制を設けるつもりはない」と述べ、「愛国心」にまつわる表現があっても規制しない考えを示した。
 文科相は「『我が国と郷土を愛するとともに』などとする評価項目を書くことは否定しないが、内心を評価することがあってはならないことを指導する」と重ねて強調した。

 「通知表の表現は学校長に委ねられている。表現を個別に審査し、認可するなどの規制を設けるつもりはない」というのは、「愛国心」論議と切り離して一般化した論理の上では、誤っているとはいえません。
 ただ、現行の学習指導要領では、小学校6年生の社会科の目標として、「国家・社会の発展に大きな働きをした先人の業績や優れた文化遺産について興味・関心と理解を深めるようにするとともに,我が国の歴史や伝統を大切にし,国を愛する心情を育てるようにする」ということが明記されています。「愛国心」評価を通知表に取り入れている学校や地域の教育委員会は、取り入れている根拠として学習指導要領をあげているということです。
 学習指導要領の法的拘束性については学問的には意見が分かれていますが、少なくとも文部科学省の公式見解としては法的拘束力を持つとされています。
 一方で、「改正」教育基本法では「愛国心」を教育の目標として明記しています。法律が法的拘束力を持つというのは、常識的に考えれば自明の前提です。学習指導要領のように、法的拘束力について議論が分かれるような余地はありません。
 従って、教育基本法改悪が実現してしまった場合、改悪法を盾にして「愛国心」評価が広がっていく危険性があります。政府は「内心を評価することはない」と強調していますが、改悪法の内容と政府の現時点での公式見解とは整合性がとれなくなってしまうでしょう。
 「愛国心」を教育の目標として明記したり、評価の対象にしたりすること自体が、矛盾に満ちた行為だといわざるを得ません。教育基本法改悪では、現在直面している教育問題の解決にはほど遠く、逆に教育現場に新たな混迷と混乱を持ち込むだけではないでしょうか。
 現在審議されている教育基本法「改正」案については、改めて廃案を求めます。