大阪市:教育担当特別顧問再任用中止求める陳情書、継続審査

 大阪市会に出されていた「現任の教育担当の大阪市特別顧問(前教育委員長)を2018年度は再任用しないことを求める陳情書」は、3月19日の大阪市会教育委員会で継続審査となった。

 「現任の教育担当の大阪市特別顧問(前教育委員長)」とは、2016年3月までは大阪市の教育委員長で、2016年4月以降大阪市特別顧問となっている、大森不二雄氏(東北大学高度教養教育・学生支援機構教授)のことである。

 自民党と共産党が陳情書の採択を求めたが、維新は不採択を主張した。公明党は継続審査を主張した。

 そのため、採択・不採択・継続審査の主張もいずれも委員会の過半数に満たなかったとして、継続審査の措置となった。

橋下・維新の「教育改革」路線の先頭に立ってきた大森氏

 大森氏は元々、橋下・維新市政のもとで2012年6月に大阪市教育委員に就任し、その後2015年11月には当時の規定に沿って教育委員の互選で教育委員長にも就任した経緯がある。橋下・維新が掲げる「教育改革」の路線の先頭に立ってきた。

 「教育基本条例」での教職員締め付け路線、市立小中学校での学校選択制の導入、「ゼロ・トレランス」的な「学校安心ルール」の導入、桜宮高校事件での「入試中止・体育科廃止」の対応、中学校給食で配送弁当形式の全員喫食強制にこだわって生徒からの不満を増大させて問題を悪化させたこと、などの大阪市での教育環境の悪化は、この時期に発生している。

育鵬社教科書採択問題

 2015年夏、市立中学校の教科書採択で、中学校社会科歴史的分野・公民的分野で育鵬社教科書が採択された問題(2016年度~19年度の4年間使用)。

 この教科書採択に際して、従来は市内を8ブロックに分けていた採択地区を、2012年12月に全市1区に変更することを決定した。教科書採択地区設定の権限を持つ大阪府教育委員会が2014年2月に承認し、小学校では2014年度採択から、中学校では2015年度採択から適用されることになった。

 そして、2015年の教科書採択では育鵬社教科書採択をごり押しすることになった。大森氏は教育委員長として、別の産経新聞社出身の教育委員とともに、育鵬社採択の議論をリードした。

 またこの際に、育鵬社教科書執筆陣系列の「日本教育再生機構」とつながりを持つ会長が経営する住宅販売会社「フジ住宅」で、従業員が教科書展示会場に組織的動員され、育鵬社支持の同一・酷似文面を記した教科書アンケートを一人あたり数十枚以上、会社関係者全体では少なくとも数百枚以上大量投函する問題が発覚した。大阪市教育委員会事務局では、アンケート集計の際に集計担当者が不審点に気づきながら、上司の指示でそのまま集計させられて教育委員会会議に資料として提出され、会議ではその資料を理由の一つとして採択が推進されていたことも判明した。

教育委員長辞任と特別顧問就任

 アンケート不正集計問題が明らかになり、大阪市会教育こども委員会でも追及が激化していた。

 そのようなもとで大森氏は、「今までは首都大学東京の教授だったが、2016年4月より東北大学教授に転任することが決まり、時間を取れなくなる」として、教育委員長および教育委員の任期を残して2016年3月末日付で辞任した。

 しかし、わずか半月後の2016年4月15日付で、吉村洋文大阪市長が大森氏を市の特別顧問として委嘱した。

 これは、大阪市の教育行政を先頭に立って進め、教科書採択問題では不正まがいと疑われる行為もおこなった大森氏への追及を逃れさせながらも、影響力は残しておくという方針ではないかとも見受けられる。

各会派の対応

 これらの経過を考えると、大阪市の教育現場・教育行政を改善するための一環としては、大森氏の市特別顧問任用を中止することも手段の一つではないかといえる。

 各会派ともに、はっきりと採択を主張してほしかった案件だといえる。