義務教育に関する国民アンケート

 教育関係の有識者で作る「日本の教育を考える10人委員会」がこのたび「義務教育に関する国民アンケート」をおこないました。
 結果はマスコミで「所得格差が学力二極化につながっていると考えている人が多い」という形で紹介されました。
 詳細なアンケートの結果が「日本の教育を考える10人委員会」のweb上で公開されていたことを受けて、当サイトでもアンケート結果をさらに検討してみたいと思います。
※アンケート結果はこちらから入手できます。
義務教育に関する国民アンケート結果報告』(PDF)


 アンケートは、少人数学級や義務教育費国庫負担制度・公務員総人件費削減など、義務教育をめぐる環境の変化に対して、「これはわが国の将来にかかわる重要な問題であり、国と国民が十分に議論していきながら、今後の義務教育のあり方を検討していくことが必要です」として、国民意識を総合的に分析することを目的としておこなわれたということです。
 調査方法は、インターネット調査会社の会員から、都道府県・年齢別の人口比に応じて抽出した、20歳以上の25000人を対象におこなったということです。
 調査結果としては概して、「少人数学級や教育条件の整備など、識者や教育関連の団体などが主張しているような教育改革を国民も望んでいる。現在の教育行政がおこなっている教育改革の方向性は望んでいない」という傾向が出ています。

【学級編成】

 学級編成については、少人数学級については7割が賛成していて、また小学校での1クラスの適切な人数は20~30人と考える人が過半数などという結果が出ています。
 40人以上の学級が適当と考える人も若干いましたが、その理由としては「子どもたちが多くの友人を作るのに適当な規模だから」と子どもの成長を考える立場からの意見が多くを占めていました。
 学力向上や教員の目が届く規模ということを考えれば、個人的には20人前後の学級編成が望ましいのではと考えています。その一方で「子どもたちが多くの友人を作るのに適当な規模」という理由で40人以上学級を支持する理由も理解できるので、少人数学級を実現しながらも「多くの友人作り」を可能にするように、各学級や学年を超えた交流を推進するような学校運営の工夫も重要になってくるのではないかと感じました。
 また、約半数の人が「財政負担がかかっても少人数学級の導入が必要」と回答していることも注目されます。

【教職員の数】

 教職員の数については、「児童生徒数の減少に伴って減少する数以上に教職員は削減すべきではない」と考えている人が58%にのぼることが明らかになりました。「児童生徒数が減少しても、現状の教職員の数を維持すべき」と考える人も16.6%いて、合計すると全体の約8割が教職員削減には反対・慎重な姿勢を示しています。
 子どもによりよい教育条件を提供するということからも、教職員の適正な配置は必要になってきます。私見としては、教職員の多忙化・仕事量の増加や、少人数学級を実現させることなどを勘案すると、「少なくとも、児童生徒数の減少以上の教職員削減は論外。適正配置を追求すると教職員の定数維持や、むしろ定数増もありえるのではないか」とみています。

【義務教育費国庫負担制度】

 教職員給与の財源となる義務教育費国庫負担制度は、従来は「国と都道府県が半額ずつ負担」でしたが、2006年度から「国の3分の1負担・都道府県が3分の2負担」に変更されました。
 アンケートでは、義務教育費国庫負担制度に対する意識についても調査しています。調査結果では、従来制度の「国と都道府県が半額ずつ負担」を支持する人が55.1%を占めています。また「国が全額負担すべき」と回答した人も27.9%を占めています。全体としては、義務教育に対する政府の財政保障の体制を強めることを求めている人が多数を占めているという結果になっています。
 義務教育費国庫負担制度については、個人的には従来の「国の半額負担」を支持し、従来制度の復活を願っています。またアンケートの結果を見る限り、義務教育費国庫負担制度の変更が、国民世論に沿ったものだったのかということも検証される必要が出てくるのかもしれません。


 このアンケート結果は、全体としてみると「行政側の進める教育改革は、国民世論に沿ったものになっていないのではないか」という印象を受けます。
 アンケート結果で示された声が、少しでも教育改革に反映されることを願います。
 教育改革そのものは当然必要ですが、具体的な方法論が問題になってきます。子どもの立場に立ち、また国民世論や学校現場の意見を反映した教育改革を求めていきたいと考えています。