「つくる会」教科書に批判的な現場教師の意見を抹殺:東京・杉並区

 東京都杉並区で「新しい歴史教科書をつくる会」が関与した扶桑社版社会科歴史教科書が採択された問題で、現場の教員は「つくる会」教科書に批判的な意見を出していたにもかかわらず、教育委員会への報告の過程で批判意見が抹殺されていたことがわかりました。


 「杉並の教育を考えるみんなの会」が情報開示請求をおこない、開示された資料を分析した結果、この事実関係が判明しました。同会は8月24日に記者会見を開いてこの事実を明らかにしました。
 区立中学校23校で社会科教員が「教科書調査報告書」を作成し、教科書調査会に提出しました。うち18校の報告書で、扶桑社版教科書に否定的な意見が出されました。
 扶桑社版教科書に否定的な意見としては、『しんぶん赤旗』2009年8月25日付『教師からの批判反映せず 「つくる会」教科書採択で判明 東京・杉並』によると、以下のようなものがあがっていたということです。

・難しい語句が多く、文末も硬い表現である
・世界史の流れをとらえて、日本の歴史を理解するには偏った内容の選定である
・民衆の視点に立った記述が少ない
・戦前の復古的な内容を多く扱っており、戦後の扱いが不足している
・独自の歴史観や価値観が感じ取られ、中立性に欠ける
・今日までの歴史研究の成果が生かされていなく、一面的である

 しかし教科書調査会は集約の際に批判的意見を無視し、扶桑社版教科書に肯定的な内容が大半を占めた報告書を杉並区教育委員会に提出したということです。
 扶桑社にしても自由社にしても、「つくる会」教科書は歴史の到達点を無視した一面的で中立性に欠ける内容です。また教育的観点からも、特定の思想を一方的に注入しようとする代物です。
 否定的な意見が多く出されているにもかかわらず無視して、あたかも現場の教員から肯定的な意見が多く寄せられているように描いた資料を作成したことは、採択をゆがめるための不正行為ではないかといえます。特定の政治思想に基づいて採択を強要するという結論が先にあり、自分たちにとって不都合な事実は消し去るためには手段を選ばない、ということだといえます。
 杉並区でも前回2005年の採択時にも、「つくる会」関係者が圧力をかけたことや、「つくる会」に否定的な意見を出した現場教師が意見書の書き直しを強要されたことなどが報告されています。また全国各地でも、「つくる会」教科書が採択された地域や採択策動が表面化した地域では、「つくる会」関係者の圧力や不正行為などが、疑惑も含めて次々と表面化しています。
 今回の採択でも不正があったといえ、採択はやり直されるべきだといえます。