下市町車いす生徒就学訴訟と毎日新聞「記者の目」

 奈良県下市町で、今春小学校を卒業した車いすの女子生徒が地元中学校に入学を希望したところ、養護学校への就学をすすめられた問題がありました。


 この問題については生徒側が中学校への就学を希望して訴訟になりましたが、6月に生徒の就学を認める仮の義務づけが出され、また7月には町教委が正式に中学校入学を認める形で終結しています。
 この問題について『毎日新聞』2009年8月18日付で、『記者の目:車椅子の少女、奈良の町立中学入学=高瀬浩平(奈良支局)』という記事が発表されています。
 記事は本人・家族や同級生、町教委などへの取材の経過を踏まえ、担当記者がコラムとしてまとめたものです。記事では養護学校を薦めた町教委の主張もある程度理解できるとした一方で、健常者と障害児が一緒に学ぶことで本人にとっても周囲にとっても教育的効果は大きいとしています。
 記事の内容は賛同できます。私見としては、町教委が養護学校就学をすすめた当初の主張にも一定の根拠があり、町教委の当初の判断についても一般論という意味では理解できます。しかし本人の希望や実状などに沿って判断されるべきで、今回の場合はやはり中学校への就学という結果に落ち着いたことは歓迎できることでしょう。
 生徒の就学を認める仮の義務づけをおこなった奈良地裁決定では、「何ができないかとの観点のみではなく、どのような能力が残され、何ができるかとの観点から将来の可能性を信じ、生徒と保護者の意向を踏まえて判断するのが、特別支援教育の理念に沿う」と指摘されています。
 奈良地裁決定で指摘された観点はこの生徒の問題個別のものではなく、普遍的な原則だといえます。何が「正しい」「誤り」ということは一概に決められるようなものではありませんが、必要な生徒に対して周囲の状況や本人・保護者の意向などをていねいに判断し、望ましい支援をとっていけるような体制が、全国的にも進んでいくことが望まれます。
(参考)
記者の目:車椅子の少女、奈良の町立中学入学=高瀬浩平(奈良支局)(毎日新聞 2009/8/18)