虐待保護は不当として提訴:静岡市

 「虐待通告があったとして、長男が児童相談所に一時保護され、2年以上も面会や連絡ができない状態が続いているのは親権剥奪」などとして、静岡市に住む両親が静岡市・静岡県・国を相手取り損害賠償を求める訴訟を、7月23日に東京地裁に提訴しました。

 この事件については、訴訟準備として2009年3月に証拠保全手続きが実施されたことが報じられていました。
 事件は2007年に発覚しました。当時静岡市立小学校1年生だった男子児童について、小学校の教職員らが体にあざがあるのを見つけました。学校側が保護者に問い合わせたところ虐待が発覚し、児童相談所が保護しました。
 両親側は「しつけの範囲内の『体罰』をおこなっていた」と虐待を事実上認めていますが、児童相談所の対応は承服できないなどと主張しています。
 両親側の主張は問題外です。こんな訴訟も手続きさえそろえば法的には可能なのでしょうが、両親側の主張は逆恨み・逆切れと一言で片づけてもいいぐらいです。こういうわけのわからない訴訟を起こすこと自体、手続き上は可能だといえども、心情的には不愉快です。児童相談所の対応は正当で、両親側の主張に正当性は一切ありません。
 虐待をおこなう人間は、保護者、児童関連の施設・団体の職員や指導者、学校の教師(学校でおこなわれる児童虐待事件は「体罰」という別の用語があてられることもありますが、実質的には虐待と同義です)などを問わず、必ずといっていいほど「しつけの範囲内」「暴力は正当」などと主張します。しかしその結果、児童が大けがをしたり、心身に重大な後遺症を残したりしているのです。そんな行為が「正当」であるわけはありません。
 自分たちがおこなう暴力や人権侵害行為は正当で、暴力・人権侵害への対応こそが人権侵害である――虐待の加害者はそういう主張をおこなうことも多くあります。実際に過去の事件でも、そういう主張がおこなわれたことも多くありました。
 今回の問題も平たく言ってしまえば「加害者側の開き直り・逆切れ」の構図ですが、そういう身勝手な主張には全く同意できません。
 他人の人権を侵害するような主張をおこなったり実際に人権を侵害する行動をおこなう人物に対しては、人権侵害行為を止めさせるために必要な措置をとることは、人権は擁護されなければならないという観点から当然のことです。他者への人権侵害をするような「権利」はそもそも存在しません。人権侵害行為への「妨害」、すなわち被害者の救済は、加害者への人権侵害ではありません。
 日本の司法は概して子どもの権利救済には弱く、加害者を擁護するような形になる傾向もあります。しかしこんな逆恨み的な訴訟は全面棄却されるべきだといえます。
(追記 2009/7/24 16:00)
 FNNニュース「虐待の疑いがあると児童相談所に保護されている児童の両親が国などを相手に損賠提訴」(2009/7/24配信)によると、訴えを起こしたのは「元海上保安官の松島弘さん」夫妻だということ。
 またFNNの記事では、父親が記者会見で「子どもが帰ってきたときに、逃げなかったと主張できるような戦いを続けたい」と話している映像が紹介されています。唖然とします。