センター試験「ムーミン」問題:朝日新聞が設問の根拠聞く質問状

 大学入試センター試験「地理B」の「ムーミン」問題。朝日新聞がこのほど、大学入試センターに設問の根拠を聞く質問状を送付し、回答が返ってきたとのこと。

 同紙ウェブ版2018年1月16日配信『ムーミンの舞台、入試センター「設問に支障なし」』および『ムーミンの設問、根拠は? 大学入試センターの回答全文』が質問内容と大学入試センター側の回答内容を紹介している。

 大学入試センターでは、「キャラクター自体、著者の出身国及び原作の言語等に関する知識は、直接必要ないもの」としている。

正答を導く根拠

 大学入試センターでは、正答を導く根拠、プロセスとして、概略で以下のような回答を寄せたという。

2018年センター試験「地理B」問題

2018年センター試験「地理B」問題

 アニメーションに関する部分は、選択肢「タ」の画像(ムーミン)では、背景の自然の描写から、「低平で森林と湖沼が広がるフィンランドが類推」されるとした。また選択肢「チ」の画像(小さなバイキングビッケ)からは、キャラクターの背後にいる船・キャラクターの服装・「バイキング」の記載を元に、スカンディナヴィア半島沿岸や周辺海域が類推される、設問の設計上スウェーデンはすでに例示している・フィンランドは関連が薄いからノルウェーと類推されるとした。

 また言語に関する部分については、言語そのものの理解は不要で、地理Bの学習範囲である言語区分の知識に基づき、選択肢「A」はスウェーデン語と非常に似ているためノルウェー語、選択肢「B」はスウェーデン語とまったく異なるためフィンランド語と判断できるとした。

 これは、予備校などがセンター試験結果速報サイトでおこなっている問題解説で示している解法とも、大筋で一致することになる。

作品の舞台は?という問いには引き続き疑問

 しかし、「ムーミン」はフィンランドを舞台にした作品とは明示されていない、また「小さなバイキングビッケ」はノルウェーを舞台にした作品とは明示されていない・スウェーデンの児童文学でスウェーデンが舞台と思わせる描写もあるといった指摘が出ている。

 さらには「小さなバイキングビッケ」での「ヴァイキング=角の生えたかぶと」の描写はステレオタイプ的なもので、史実を踏まえていないなどの指摘もある。

 また「ムーミン」はスウェーデン系フィンランド人の作品でスウェーデン語で書かれている、フィンランドはフィンランド語とスウェーデン語の2つが公用語なのに「フィンランド=フィンランド語」と単純に結びつけるとも受け取れるような設問はどうかという指摘も出た。

 大学入試センターはこれらの点については、「具体的な設問の設計に際して、受験者が解答しやすいよう、出題の場面や条件を一部単純化した記載になったことについては、御指摘を踏まえ、今後の問題作成に当たって一層留意してまいります」という回答にとどめている。

 「ムーミン」がフィンランドを舞台としていると判断した根拠、「小さなバイキングビッケ」がノルウェーを舞台としていると判断している根拠については、大学入試センターのこの回答では明確に示されていない。

 一般的な設問設計で言えば、設問作成にあたって設問の条件を単純化・簡略化して、受験者が解答しやすいように図ることはありうる。その一方で、今回のケースは「場面や条件の単純化」の範囲に収まるのだろうかという疑念も生じることになる。

 単純化・簡略化ではなく、元のアニメーションとは全く異なる独自の前提条件を出題者側で付け足したようにも見える。

設問の前提を揺るがしかねない

 確かに、狭い意味での問題解法としては、大学入試センターが示したようなプロセスで、純粋に高校地理の学習内容の範囲の知識だけでも解けないことはない。

 しかし、だからといって設問に全く問題がないというわけではない。疑問が出てもしかるべきなのではないか。

 出題者側が実際のアニメーションとは異なる独自の前提条件を付け足したような形になり、アニメへの知識がないとスルーできることでも、ヘタにアニメに関する雑学知識があると逆に矛盾する前提条件となり、出題者の意図を忖度して解答する要素を持ち込むことになるというのは、いかがなものか。

 設問の設計そのものは思考力を試す設計になっているといえる。しかし引用した資料の解釈に誤りがあれば、解答にはたとえ支障がなくても、設問の前提条件があやふやになるのではないか。