自然体験学習ボート転覆事故:当時の校長に「不起訴不当」議決

 静岡県浜松市の浜名湖で2010年6月、「静岡県立三ヶ日青年の家」で自然体験学習中の愛知県豊橋市立中学校の生徒らが乗ったカッターボートが転覆し、1年の女子生徒が死亡した事故があった。この事故では青年の家のスタッフや引率の学校関係者など6人が業務上過失致死容疑で書類送検されたが、当時の「青年の家」所長以外は不起訴となっていた。

 死亡した生徒の家族が、当時の校長が不起訴になったことを不服として静岡検察審査会に再審査を申し立てていた件について、同審査会は10月6日付で不起訴不当の議決をだした。引率の最高責任者として尽くす義務を十分におこなったかどうか不明確として、再捜査が必要と判断した。

 事故は2010年6月18日に発生した。豊橋市立中学校では6月17日~19日の2泊3日の予定で、三ヶ日青年の家に宿泊し、1年の生徒を対象にした自然体験学習を実施していた。浜名湖で手漕ぎカッターボート訓練のプログラムを組み、青年の家スタッフの指導のもとでボートに乗船することになっていた。

 当日は天候が雨模様で、大雨・雷・強風・波浪・洪水の各注意報が発令されていた。しかし校長以下引率教員は注意報の発令を把握せず、青年の家スタッフから「実施可能」との説明を受けて予定通りカッター訓練を実施することにした。

 生徒や引率の教職員らは4艇に分かれ、午後1時過ぎから陸上でインストラクターの指導を受け、午後2時30分頃には浜名湖に漕ぎ出した。しかし天候がさらに悪化し、うち1艇では乗船生徒の船酔いも発生し、強風に流される形で漕艇困難に陥った。当該のボートには生徒18人と引率教員2人の計20人が乗船し、インストラクターは同乗していなかった。

 教職員からの連絡を受け、青年の家所長が漕艇する救助艇が当該のボートの救助に向かった。所長は「自力での帰港は困難」と判断し、救助艇で曳航することを決断した。しかし曳航から約5分後の午後3時20分頃にカッターボートは横風を受けて転覆し、乗船していた生徒・教職員全員が湖に投げ出された。19人は救助されたが、生徒1人が真っ逆さまにひっくり返ったボートに閉じ込められた形で約2時間半後に心肺停止状態で発見され、死亡が確認された。

 事故の流れを検討すると、未然に防げることもできたのではないかという気がしてならない。当時の校長個人の刑事責任を問う形にはなるが、学校側の安全配慮義務が十分に尽くされたのか、改めての慎重な検討を願いたい。

(参考)
◎元校長を不起訴不当=中1死亡のボート事故-静岡検察審(時事通信 2016/10/8)
◎カッターボート事故不起訴不当(NHKニュース 2016/10/8)