学校案内冊子での進学先高校公表、市長は評価する見解:大阪市

 大阪市立中学校で、学校選択制の参考資料として次年度中学校入学予定児童と保護者に配布される「学校案内」冊子に、各中学校ごとの卒業生の進学高校名など進学実績が記載されることが、8月下旬までに決まった。

 大阪市での学校選択制は各行政区ごとに実施され、24行政区中「区内の学校が小規模校化しているため、適正規模への再編が優先」とした浪速区を除く23区で導入されている。

 大阪市教委は、2016年4月に進学実績公表を容認していた。当初は消極的な姿勢を示す意見が大半だったものの、吉村洋文大阪市長が積極姿勢を強調したこともあり、全区で掲載することが決まった。

 17区で進学先高校名と人数を記載し、残る6区では高校名のみ記載して人数掲載は見送った。

  • 高校名と人数を記載(17区) – 淀川、此花、福島、都島、旭、港、西、城東、鶴見、大正、天王寺、東成、生野、阿倍野、平野、住之江、住吉
  • 高校名のみ記載(6区) – 東淀川、西淀川、北、中央、西成、東住吉

 吉村市長は8月25日の記者会見で、「学校の進学情報は市民の情報だ。各校が切磋琢磨し、良いところを伸ばしていく大きな材料になる」などと発言して肯定的な見解を示すとともに、人数記載を見送った6区については「個人が特定されない前提で、人数を含め開示すべきだ」と注文をつけた。

 大阪市での学校選択制は、前市長・橋下徹の強い意向で導入された。住民説明会では強い反対の意見や懸念の意見が出るなどし、会場アンケートの集計ではどの会場でも反対や疑問の声が多数を占めた。また有識者や市民代表などを委員に加えた諮問機関でも導入には慎重な意見が出されたものの、橋下・維新市政が押し切った形になった。

 橋下徹という人物個人は大阪市長から去ったものの、後継の吉村洋文市長は橋下路線を継承する立場であり、維新の路線がそのまま続いている。

 学校選択制は他地域では、交通の便や有名高校への進学状況などで「人気校」と「不人気校」が固定化する傾向が出て、「人気校」では設備過密化で特別教室の普通教室への転用など、生徒数に応じて教員配置数も決まるために「不人気校」では中学校全教科の担当教員を配置できないなど、弊害が出ているとして廃止や縮小などの見直しを行っている自治体が続出している。

 大阪市でも学校選択制を利用して本来の校区外の学校への通学を選択する割合こそ少ないものの、学校選択制利用者の選択先をみれば、特定の「人気校」に人気が偏り固定化している傾向もみられる。

 また、ただでさえ全国学力テストの学校平均点や全国体力テストの学校平均値を公表しているのに、それに加えて進学先高校の名前や人数をあげるとなると、学力を「テストの平均点」や「進学先高校」と同一視しての一面的な競争がさらに進むおそれがある。

 これでは、生徒・教職員を「テストの点数」や「進学先高校」という極めて一面的な尺度で評価して競争させることで、学校運営にゆがみを生じさせることになる。「(地域では進学校といわれる)○○高校に○人進学」などの学習塾の宣伝のようなことになっては、学校教育としては具合が悪い。

 しかもそういった風潮は学校だけではなく、校区地域のまちづくりにも影響を与えかねない。「人気校」のある地域では「人気校」に入るために転入者が急増し、また「不人気校」地域ではその逆になり、それぞれまちづくりにも少なからず影響があることにもなる。

 しかも、現場では最初は公表への慎重論が根強かったにもかかわらず、市長の意向でひっくり返されるような傾向が続いていることにもなる。維新市政の弊害といえるのではないか。

(参考)
◎大阪市立中 進学実績の掲載、改めて意義強調 大阪市長 /大阪(毎日新聞 2016/8/26)