育鵬社教科書採択、岩国市教育長に質問状:山口県

 市民団体「岩国の教育を考える会」は7月4日、山口県岩国市の佐倉弘之甫教育長に対して、市立中学校での育鵬社社会科教科書採択に関する公開質問状を提出した。7月14日までの回答を求めている。

 同会では4月にも公開質問状を提出したが、回答が不十分と判断し、再度の質問状を提出することにした。採択の経緯や理由について具体的資料を公開するよう求めている。

 岩国市と和木町からなる岩国教科書採択地区では2011年採択で育鵬社版が採択され、2015年採択でも引き続き育鵬社歴史・公民教科書が採択された。なお山口県では、2015年採択で防府市や県立中高一貫校でも育鵬社版が採択された。

 育鵬社の教科書については、執筆グループの日本教育再生機構は、日本会議ともつながっていることが明らかになっている。当初は「新しい歴史教科書をつくる会」なる集団のもとで扶桑社版の前身の教科書が発行されたが、「つくる会」の内部分裂を経て、当時の反主流派が今や一大勢力となって育鵬社・日本教育再生機構・日本会議のつながりとなっている。「つくる会」旧主流派は自由社から引き続き教科書を発行しているものの、育鵬社・日本教育再生機構・日本会議の勢力と比較すれば小さな勢力となっている。

 毎日新聞2016年7月5日付『中学教科書 岩国市の育鵬社教科書問題 市民団体、採択の資料公開求める /山口』では、育鵬社教科書について「「新しい歴史教科書をつくる会」の元メンバーが執筆に加わる育鵬社版の中学歴史教科書」と表現している。これは一面では正しいものの、日本教育再生機構や日本会議との関わりを記述しきれていない点は、記述としては不十分になっているといえる。

 育鵬社教科書は、「親学」や「江戸しぐさ」などオカルト的と言ってもいいような極右的な教育・子育て観とも背景ではつながっていることになる。

 教科書の記述も一面的で、国粋主義的だったり、「自虐史観」なるものを敵視していたり、基本的人権に関する記述が軽く扱われているなど、相当な問題がある代物である。

 また採択の過程でも、育鵬社を採択した地域では、不正や首長の介入などがうかがわれるような事例が多数発覚している。

 育鵬社教科書の問題については、教科書の中身、採択での不正・政治的圧力の疑惑の両面で、厳しく追及されなければならないだろう。

(参考)
◎中学教科書 岩国市の育鵬社教科書問題 市民団体、採択の資料公開求める /山口(毎日新聞 2016/7/5)